アイルトン・セナと中嶋悟のいたF1チームがホンダ陸上部の理想 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 では、スカウティングでは選手のどういうところを見ているのだろうか。

「弊社のやり方、考え方に合うか合わないかです。競技力も大事ですが、それ以上に主体性をもって取り組むことができるか、強くなりたいという意志を持っているかです」

 最近の学生は、入社後の初マラソンでいきなりサブ10を達成した土方英和など、力のある選手が多くなっているように見える。そのことついて、小川監督はこう考えている。

「競技レベルは、自分たちが学生の頃より確実に上がっていますし、タイムも速くなっています。ただ昔は、日本選手権やマラソンで、学生トップ選手が実業団選手と争っていましたが、今はそういう学生がほとんどいない。箱根駅伝重視のスケジュールなど、さまざま要因があるとは思いますが、日本のトップレベルには学生が少ないのが現状ではないでしょうか。とはいえ、順天堂大の三浦(龍司)選手や中央大の吉居(大和)選手は、すでにトップレベルに近い実力があると思っています。」

 力のある学生であっても実業団に入って成長できるとは限らない。そこから日本のトップに駆け上がれるのは、ほんのごくわずかだ。Hondaでは、伊藤達彦がその兆しを見せている。

「伊藤は入社前に心身の準備をしっかりできたこと、そしてコロナ禍のなかでもしっかり練習に取り組めたことが大きいと思います。彼を含め、学生時代にあまり力のなかった選手が入社後に伸びており、設楽のように力があった選手はさらに強くなっている。そういう意味で育成についてはできているのかなと思いますし、その伸び幅をもっと大きくしていかなければと思っています」

 そう語る小川監督は、設楽とともにMGCに挑戦し、東京マラソン2020も経験した。なかでもMGCは、従来のレースや大会とは異なる熱を感じたという。

「日本選手権ともニューイヤー駅伝とも違いました。設楽がマラソンで日本記録を出した時もメディアの取材がかなり多かったのですが、MGCはもっとすごかった」

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