東大出身ランナーも世界を目指すGMO。実業団陸上の試行錯誤 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 では、目指すチームの形はどのようなものなのだろう。

「サッカーでいえば、レアル・マドリードのようなみんなが目指す憧れのチームになりたい」

 チームのビジョンが確立されてきたなか、社内におけるチーム認知度もかなり高くなってきている。もともと実業団は企業の宣伝、社員の士気高揚を担う側面があるが、GMOインターネットグループの場合、当初は個人活動がメインだったので、社員の関心はそれほど高くなかった。

「最初の数年はチームや選手の名前を知っていても、大会によっては応援に来てくださる人数が少なかったのですが、選手たちの活躍が目立つようになると、みんなで応援しようという機運が高まってきました」

 東日本実業団駅伝で5位に入り、2020年1月1日のニューイヤー駅伝に初出場。花田監督は社内に大きな盛り上がりを感じたという。

「ニューイヤー駅伝で1000人近くが現場で応援してくれたんです。今までも(社員との)懇親会とかはあったんですけど、多くの方が応援に来てくださるようになり、交流を深めることができた。そういう意味でチームの役割はすごく大きいと思います」

 社員の結束を高めるシンボルになりつつあるが、花田監督はそのきっかけになったのはMGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)だったという。

「MGCに至るまでの2年間、選手が出場権を獲得するたびに社内が沸きました。MGCは次の選考会レースまで興味が失われることがないですし、選手たちの日々の取り組みも評価されるようになったんです」

 同時に選手の意識も大きく変えた。

「ここ数年は一発当たれば......という感じでプロセスは関係なかったですし、箱根を走った流れでマラソンも走れてしまうことがあったんです。でも、MGCは継続的に結果を出していくためにプロセスをしっかり考えてやらないといけなくなった。勝負に対するこだわりが強くなったと思います」

 また、指導者の考えも変わったと花田監督は言う。

「一発屋をつくるのではなく、コンスタントに結果を出せる選手を育てないといけなくなった。そうすることで選手に実力が備わってきた。私は、MGCは理想的な選手強化になったと思っています」

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