2020.12.27

初マラソンで人生を変えた吉田祐也。
箱根で競技人生を終える予定が…

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 実業団に入り、学生時代と比べて陸上に対する意識の変化はあったのだろうか。

「学生時代は、集団生活でただ競技を楽しんでやっているという感じでしたが、今は走ることを仕事にしているので、責任があるなって思います。練習については、質、量とも学生時代とは比べものにならないほどレベルアップしました」

 実業団に入ってもっとも違いを感じるのがメディアの扱いだ。今年はコロナにより、大会が延期、中止になり、陸上選手がテレビやネットニュースから消えた。ただ、コロナがなかったとしても短距離以外の実業団選手、いわゆる中・長距離の選手に対するメディアの扱いは非常に少ない。

「大学は箱根駅伝があるので、年中取材を受けていた感じでした。箱根は大会の規模が大きく、優勝するとオリンピックで金メダルを獲ったような扱いを受けるので本当にすごかった。個人的にはメディアにたくさん出るより、多くの人に応援して支えてもらうことが重要だと思いますが......とはいえ、実業団全体で考えるともっと注目されたほうがいいのかなと思います」

 実業団にはニューイヤー駅伝があるが、箱根駅伝ほどの注目度はない。個人種目での出場は日本選手権があるが、100mの短距離以外はただ結果が掲載されるだけである。MGC(マラソン・グランド・チャンピオンシップ)の成功でマラソン人気は高まったが、それ以外に日本中が沸き立つようなレースがないのが現状だ。

「正直、僕が陸上長距離において箱根駅伝以上の大会をつくるのは無理だと思うんです。それよりも既存の大会をいかに盛り上げるかが大事だと思う。大迫(傑)さんが『世界との距離を縮めるために大会をやります』とSNSで発信していましたが、そういう大会を考え、実行できるのは影響力があって、幅広い人脈がある人にしかできない。僕はトップランナーと言われる人が既存の枠にとらわれず、魅力的なレースをつくってもいいと思います」

 魅力的な大会が増えれば、競技への注目度は増す。そうした大会を積み重ねていけば、選手強化の視点からもプラスになる。個人が強くなり、世界で活躍する選手を輩出するには少し時間が必要になる。