新谷仁美、タイムが爆発的に伸びた転機。「自分の気持ちが解放された」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by AFLO SPORTS

 陸上界に戻ってきた新谷は、自分に対する厳しさが増していた。2019年4月のアジア選手権の1万mで2位になった時に出てきた言葉も、メダル獲得を喜ぶのではなく自分を卑下する言葉だけだった。

「(優勝した選手に)後ろにつかれた焦りもあって75秒でしか(トラックを)回れず、相手のいいペースメーカーになってしまった。途中から独走態勢になれると勝手にイメージしていたのが敗因だと思います。1位しか許されないと考えて臨んだ大会だったので、悔しいというよりタイムも順位も話にならない結果」

 さらにその5カ月後に同じドーハで開催された世界選手権では、ラスト2周まで入賞圏内で粘りながらも、ペースアップしてきた後続集団に飲み込まれて11位という結果で終わってしまった。

 その後、横田真人コーチとの話し合いで、それまで自分で作っていた練習メニューやトレーニング計画を、コーチに立ててもらうことになった。それが彼女の変化のきっかけになったという。

「レースで結果を出すのが私の仕事で、それ以外のことは横田コーチやクラブのスタッフが管理してサポートしてくれることで、自分の気持ちが解放されました。以前は自分だけで考えていて信頼できる人がいなかったのが、今はサポートしてくれている人たちのすべてが信頼、信用できるので、そのありがたさを改めて感じました」

 自分を信じて進むことは大切だが、人に頼っていいことに久しぶりに気がついた。

 横田コーチが組む練習内容に関しても、「自分でやっていたころよりは量も質もボリュームアップしている」と話す。

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