DeNA館澤亨次が挑む「5秒49の壁」。1500mで57年ぶり快挙へ (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

東海大時代は「黄金世代」のひとりとして駅伝で活躍した館澤亨次東海大時代は「黄金世代」のひとりとして駅伝で活躍した館澤亨次「縁あって横田さんに出会ったのですが、最初から一方的に信頼していました(笑)。横田さんは自分の状態に合わせてメニューづくりを考えてくださるし、次はどんな目的でレースに取り組んでいくのかということを毎回話してくれます。たとえば、セイコーの時はペーサーがいるのでそのうしろについて、前で勝負しようと。日本選手権ではフロントレースでどこまで通用するか、勝利とタイムを狙っていこう、とか。レースで何をするのかをあやふやにせず、やると決めたら徹底します。今もレースは怖いですが、やることが明確になったので迷いはなくなりました」

 横田コーチは日本選手権800mで6回優勝し、2012年のロンドン五輪で800mに出場。日本の中距離界をリードしてきたひとりだ。世界を知る指導者は、館澤にとって欠かせない存在となっている。それは自らの大きな目標を達成するためだ。

「まず、東京五輪に出ることです」

 館澤はキッパリとそう言った。

「五輪の1500mは、日本人が長い間出ていないですけど、参加標準記録を破って東京五輪に出るのは不可能だと思っていません」

 男子1500mの五輪出場は、1964年の東京五輪まで遡る。来年、館澤が東京五輪に出場すると57年ぶりの快挙になる。東京五輪の1500mの参加標準記録は3分35秒だ。館澤の自己ベストは3分40秒49なので、まずは5秒49を削る作業が、東京五輪出場を決める来年6月の日本陸上選手権まで続くことになる。

「全日本実業団の時、ひとりで引っ張って40秒台が出ているので、(参加標準記録突破は)そんなに難しいことじゃないかなと思います。今年のレースでの勝ち方、タイムは大きな自信になりました。そのためにも、まずは40秒の壁を超えることですね」

 3分35秒切りを目指すために、(1周の)ラップタイムもすでに考えている。

「考えている理想のラップは、57-59-59-40で、これで3分35秒になります。このなかのどこかで1秒を削っていかないといけない。自分はラストスパートで40秒を切ったことがないのですが、今は切らないと勝つことができない。1秒を削るなら、ラストを磨かないといけないと思っています。ここを伸ばしていかないと、日本で通用したとしても海外では通用しない」

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