2020.11.13

DeNA館澤亨次が挑む「5秒49の壁」。
1500mで57年ぶり快挙へ

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 7月18日のホクレンディスタンスチャレンジ千歳大会1500mでは3分46秒93に終わった。本調子にはほど遠く、レース後は悔しそうな表情を浮かべていた。

 ところが、それからわずか6日後の7月24日、東京陸上選手権の1500mで館澤は3分42秒67で優勝を果たした。

「まだ調子が十分に上がっていなかったので自信はなかったんですが、タイムは出せたんです。大学4年の1年間は一度も43秒を切れなかったのですが、この時はあっさりと出せた(笑)。それで『そんなに悪いわけじゃないんだ』と思えるようになって、徐々に調子が上がっていきましたね」

 つづく8月26日のセイコーグランプリの1500mでも3分41秒07で優勝。ペースメーカーが引っ張るなか、荒井七海(Honda)らと争い、勝った。

「正直、優勝できると思っていなかったんです。荒井さんをはじめ、一緒に走ったメンバーに勝てるイメージがなかったので。でも、しっかり戦えて勝てたことで自信がつきました。いま思えば、自分のなかに変な壁をつくっていたのかなと......。ここでの走りが全日本実業団、日本選手権の走りにつながったと思います」

 館澤の言葉どおり、全日本実業団陸上競技選手権1500mではスタートから先頭を一度も譲らない完璧な走りを見せ、3分40秒73のシーズンベストで優勝。そこに至るまで、館澤は練習スタイル、メニューなどをあらためて見直しながら、ランナーとしての完成度を高めてきた。

「大事にしていたのは練習です。『練習だから消化できなくてもいい』と割り切る人もいますが、そうは思いません。出されたメニューをこなすことで自信がつくので、自分はポイント練習をこなすことを重点に置いてきました。

 大学の時は木村(理来)や飯澤(千翔)と1500mの練習をしていたのですが、自分基準でメニューをつくってくれていたので、こなせないことはなかったんです。でも今は、楠(康成)さんと一緒に練習しているのですが、とにかくハード。毎回必死に食らいつかないとダメなレベルですが、その環境がありがたいなって思います」