全日本大学駅伝で東海大に誤算。8選手はどんな思いで走っていたのか (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

 今回の全日本大学駅伝は1区から1年生が活躍し、三浦、佐伯ら4人の1年生が区間新を出し、3区では駒澤大の鈴木芽吹(めぶき/1年)が区間5位でチームの順位を1つ上げた。石原もそうした強い1年生を象徴する走りを見せた。

「走る前、両角監督から『前との差はだいぶ開いているので、自分の走りをしよう』と言われたのですが、いざ走るとガンガン突っ込む走りになって......4キロぐらいから前の姿がどんどん大きくなって、『イケるな』っと思って淡々と走りました」

 石原は大学に入り、ポイント練習の質が上がり、ジョグの量が増え、走力が増すとともに体つきも変化した。大会前日、西田と同部屋だったのだが「僕は(キロ)2分50秒で押せます」とルーキーとは思えない自信を見せていたという。その言葉どおり、33分16秒(区間新)という圧巻の走りで、11位から6位と順位を押し上げた。

 石原は消えかけた2連覇への火を再び灯し、只者ではないことを証明した。

「自分の力? いえ、シューズの影響ですね(笑)」

 謙虚で強い1年生は、箱根駅伝でも大きな力になるだろう。

 5区の本間敬大(けいた/3年)は追い上げムードのなか、大事な役割を課せられた。

「走る前、両角先生から『石原がいい位置でくるから重要な場面だぞ』と言われました。2区が終わった時点で順位が落ち、自分的には緊張がほぐれたんですけど、一気に緊張しました」

 本間は前を見ながら追うという走りやすい状況で襷を受けた。駒澤大の酒井涼太(2年)、青学大の佐藤一世(1年)、東洋大の大澤駿(4年)と並走したが、彼らが強いのは理解していたという。実際、6キロぐらいになるときつくなり、前をいく青学大についていけなくなった。

 だが、ここから本間は粘った。

「自分は4年生の塩澤さん、名取さん、西田さんに本当にお世話になっていて、走れない時も気にかけてくれていたんです。4年生のこの駅伝にかける思いが強いことはわかっていたので、きつくても先輩たちのために走ろうと思って......それで少しは粘れたのかなと思います」

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