3度の箱根駅伝→実業団退社も再出発。松村陣之助が語る「働きながら走る」意義 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sankei Visual

 松村の1日は、午前6時の朝練習から始まる。7時半には朝霞仲町店に出社し、食品部で品出しや発注などの業務をこなし、午後2時半まで勤務している。最初は仕事が思ったよりもきつく、大変だったという。

「入社したての頃は仕事に体が慣れず、結構しんどかったですね。わからないことだらけで、とにかくメモしていました(笑)。仕事と競技のサイクルがなんとなくしっくりするようになるまで2カ月ぐらいかかりました」

 現在、ポイント練習が週2、3回行なわれ、ジョグは1日20〜30キロを最低ラインにしている。陸上を続けていくうえで、松村は「仕事と競技」の両立の重要性をあらためて学んだという。

「レースで結果を出すと、一緒に仕事をしている人がすごく喜んでくれるし、東日本実業団駅伝やニューイヤー駅伝に出場するとお店の人が全員応援してくれるんです。僕の店では幟(のぼり)とかポスターが貼られて、お客さんからも声をかけられるようになりました。僕が仕事を適当にやっていたら、そういうことはないと思うんです。やっぱり仕事をしっかりこなすことでみなさんが応援してくれるので、両立はすごく大事なことであり、基本だなって思っています」

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 将来、実業団を考えている学生にとっては、「競技と仕事の両立」は当たり前のように聞こえるが、そのことで悩み、退社してしまうケースもある。

 松村は一度、苦い経験をしたあと、コモディイイダに出会い、自分が成長する場を見つけることができた。その経験から学生には「実業団は甘くない」ことを理解してほしいという。

「僕は最初のチームで苦しみました。2年間、何をやっていたのかわからない......すごくもったいなかったと思っています。もう一度やり直せるのなら、言われた練習をこなすだけではなく、その意図を監督に聞き、自分の強みであるスピードを極めたかった。実業団に入る学生の皆さんには、いつまでも走れる状況が続かないことを理解し、日々の練習を大事にしてほしいと思います」

 前回のニューイヤー駅伝に出場することで知名度が上がり、地元で応援してくれる人の数も増えた。その反響の大きさに驚くとともに、結果を出して注目されることで自分のモチベーションにもなると感じた。

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