女王・ヘンプヒル恵に訪れた試練。競技から逃げて見つけた戦う意味 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文text by Oriyama Toshimi
  • 村上庄吾●撮影 photo by Mukarami Shogo

 自分と向き合う中で、ヘンプヒルは気がつくと陸上のことばかり考えていた。そこであらためて、「自分は陸上が好きなんだ」と思った。競技をすることが好きだし、それを応援してくれる人がいることのありがたさをあらためて感じた。そして、その人たちの喜んでいる顔を見たいと思って競技をしていたことを思い出した。

今年7月の東京陸上競技選手権では、七種競技で優勝を飾ったヘンプヒル恵 photo by Morita Naoki/AFLO SPORT今年7月の東京陸上競技選手権では、七種競技で優勝を飾ったヘンプヒル恵 photo by Morita Naoki/AFLO SPORT「勝つためだけではなく、『私が頑張る姿を見て誰かが喜んでくれたり、自分自身が楽しく競技できればいいんじゃないか』と思ったんです。もちろん勝つことは大事だけど、負けることでしか得られないものもあるんじゃないか、とも思いました。

『勝つって何だろう?』ってすごく考えたけれど、自分が苦しんでいるときにサポートしてくれた人たちへの恩返しになる、ということが答えのひとつだと思いました。そこからは、自分から動いて前進する陸上に変わりました」

 大学を卒業してアトレに入社してからは、練習環境やコーチを変えたが、指導してもらっている意識から、自分から提案して話し合い、その練習をサポートしてもらう形へと変わっていった。

「何か新しいことをやって、『力になってきたかな』と感じるまでには大体3カ月くらいかかるんです。でも、それが七種目もあるから、今は本当に時間が足りない」とヘンプヒルは笑う。

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