「トラックの格闘技」で日本人は勝てない。クレイアーロンは定説を覆せるか (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●撮影 photo by Nakamura Hiroyuki

 クレイアーロンがアメリカ留学を決めた理由は、まさに横田氏のこの指摘にある。「まだ知らない世界をより多く経験したい」ことが大きな動機になっている。

「アメリカのレベルはすごく高いし、テキサスA&M大には強い選手もたくさんいます。そこで海外のレースに対応できるように、自分の走りを作ることを目標にしていくつもりです」(クレイアーロン)

 さらに横田氏は、クレイアーロンのアメリカ留学について、本人が求める目標以上に大きな効果がある、と話す。

「日本にいれば、日本記録が次の目標になります。しかし、アメリカにはそのレベルの選手が普通にいます。日本では、自分で新しい目標を切り拓いていく必要がありますが、アメリカでは目の前の敵を倒すことに没頭していれば必然的に強くなる。大学チャンピオンを目指せるようになれば、世界大会の準決勝レベルも見えてくるんです。

 コーチングスキルの高さももちろんですが、一番重要なのはやはり、選手の目線が変わることだと思います。それに彼が行くテキサスA&M大は、昨年の世界選手権王者ドノバン・ブレイジャー(アメリカ)の出身校です。800mが伝統的に強い大学の練習や試合で揉まれ、私たちがやってこなかったことをやれば、その先にはきっと我々が見たことのない世界があるはず。その点でも、彼のアメリカ留学という選択は本当にすばらしいことだと思います」

 クレイアーロンは、昨年の高校ランキングで6位に入った47秒12という400mのスピードが、自分の強みだという。さらに1500mでも、昨年の高校ランキングでは、首位の留学生A・マイナ(興国高)まで0秒17差の2位につけている。

 現在の自分の実力について、クレイアーロンは以下のように分析している。

「相洋高校ではマイルリレーもたくさん走ってきたので、400mの力がついていて、なおかつ1500mも強化しています。800mはスピードと持久力の両方が大事ですが、今の自分の持ち味はスピード。特にラストスパートではそれが生かされていると思います。世界の800mは最初の1周が速くて、すごい時は49秒になる場合もありますが、アメリカの大学選手権だと速くて50~51秒くらい。だから僕もリラックスした走りで51~52秒で入れるようにし、そのうえでラスト300m、ラスト200m、ラスト100mとスピードを上げていけるようになりたい。まだ成長段階なので、それをこれからの目標にしていきたいですね」

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