箱根で好走した駒澤大の新星は五輪を目指す。速いより強いランナーに (4ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 能力の高さは証明済み。大舞台でも動じることなく、かつどんな展開でも冷静さを失わないメンタルの強さも魅力だ。だが大八木監督は「自分のよさをどう生かすか、いろいろ私に聞いてきますが、目指す姿はまだはっきりしていないようです」と語る。強さを手にするためには臨機応変に対応できる柔軟性は残しつつも、自分なりのスタイルや勝ち方の確立が求められる。

 そのひとつがラストスパートだ。進行中のスピード強化はまさにこの力を伸ばすため。とくに日本選手権のような勝負のかかるレースでは最後の爆発力がものをいう。

 かつて日本選手権1万mを4連覇した佐藤悠基(日清食品グループ)は、前をいく選手の背後にピッタリとついて力を温存し、残り300mを切ってからのスパートで勝利を積み重ねた。

 大迫はこの間、3度、佐藤にラスト勝負で競り負けたが、残り2周からのロングスパートとフィニッシュ直前でのスプリントを使い分ける力を磨き、のちに同種目で2度の日本一になっている。

 田澤の特性を考えれば、勝ちパターンはロングスパートに近い形となりそうだが、果たしてどうなるか。そのスタイルをまさに今、構築中だ。

 挑戦は始まったばかり。今の取り組みの先にはスタミナの強化も計画している。やりたいこと、やるべきことはたくさんある。大八木監督は楽しげにそう語り、田澤は自分自身の今後の変化とレベルの高い争いに足を踏み入れる期待に胸を膨らませている。

 ひとりの若者が大きく変貌していく姿を見ることができそうだ。

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