箱根で好走した駒澤大の新星は五輪を目指す。速いより強いランナーに (3ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

「レベルアップできたと思います。自信も出てきて、監督のオリンピックを目指そうという言葉に『いけるかもしれない』と思えるようになったんです」

 マラソンランナーの中村と、ハーフマラソン以上の距離は箱根駅伝3区(21.4km)しか経験していない田澤ではさすがにスタミナに差がある。練習での距離走では肩を並べて走りながらも、中村より常に10キロほど短めに設定されていた。しかしスピード練習では同じメニューをこなし、けん引役も務めた。この合宿は、トラックを主戦場とする若者の意識を変えるのに十分な濃密な時間だった。

 帰国後、田澤のトレーニングのレベルは格段に上がった。短い距離をハイペースで繰り返すスピード練習では設定タイムが上がっただけでなく、ひとりで取り組む機会が増え、自分の力で自分を追い込むことを課せられた。2つの狙いがあると大八木監督は明かす。

「勝てる選手になるためにはもっとスピードが必要。コンスタントに5000mで13分30秒を切れる選手(現在の田澤のベストは13分41秒82)にならないと。また長い目で見れば、彼には将来マラソンで活躍してほしい。大迫(傑)選手(ナイキ)のようにひとりでもレースをつくって押し切れる選手を目指していますので、周りの力を借りずに、自分自身に負荷をかけられるような練習を今から始めています」

 コロナ禍のため大学のトラックが使えない日々が続いたが、練習場所を工夫しながら、田澤は質の高いトレーニングを継続している。6月半ばの取材時点では「体はかなりきつい状態です」と悲鳴を上げていた。限られた環境と状況ではあるが、昨年とは比にならない鍛錬ができている。

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