箱根で好走した駒澤大の新星は五輪を目指す。速いより強いランナーに (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • photo by Naoki Morita/AFLO SPORT

 とはいえ、田澤は現在19歳。可能性を大きく秘めているのもまた事実だ。指導する駒澤大、大八木弘明監督も挑戦自体に意味があると考える。

「大学生ですからチャレンジすることで成長できればいい。自分より強い選手に勝負していった先に大きく飛躍して欲しいと期待しています。今年、どんな戦いができるか試してみたいですね」

 速い選手ではなく、強い選手を育てたい──大学長距離界の名将は日頃から口癖のようにこう繰り返す。マラソンでは昨年9月のMGC(マラソングランドチャンピオンシップ)で優勝した中村匠吾(富士通)を指導し、五輪へと導いた。田澤はその師とともに夢に向かって走り出した。

 この駒澤大の師弟がオリンピックを意識し始めた時期には、若干のずれがある。大八木監督は昨年11月の八王子ロングディスタンス。田澤は自己ベストを出したレースだ。

「入学後からスタミナの強化をしてきて、それがある程度、身になったと実感できたのです。ここからはもっとスピードを鍛えていこう、そうすれば実業団の強い選手たちと勝負できるかもしれないと思いました。ならばチャレンジしてみてもいいなと」

 ハイレベルな選手の練習や生活スタイルを学ばせたいという考えから、大八木監督は2月に中村匠吾の練習パートナーとして米国・アルバカーキでの合宿に田澤を同行させた。ここで充実したトレーニングを積んだことで、田澤の目線は上を向き始める。

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