MGC勝者・中村匠吾の武器はロングスパート。周到な計画で才能が開花した (2ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • photo by Jun Tsukida/AFLO SPORT

 しかし翌年の箱根1区では3度にわたるスパートをかけ、区間賞を獲得した。まさにMGCのような展開だった。当時からロングスパートを武器にしていたが、以後も走力の向上だけでなく、レース経験を重ねることで仕掛けどころを外さない勝負勘を養い、ラストの強さを本物に近づけていった。

 だが、それをマラソンで発揮するまでには時間がかかった。そもそも中村の初マラソンへの準備は周到な計画のもとで行なわれている。駒澤大・大八木弘明監督は振り返る。

「大学3年で30kmのロードレースを走った時、25㎞から失速しました。この時にスタミナ的にはまだまだだなと感じました。当時はマラソン練習をできるだけの体もできていませんでしたし、加えて今はマラソンも高速化している時代。5000mや10000mでもっとスピードを伸ばし、ハーフを中心に試合を組みながら時間をかけて準備をしようと考えました」

 富士通に進んでからも駒大を練習拠点として、大八木監督の指導を仰いだ。入社後も2年間はスピード強化とスタミナ醸成が練習の中心。そして練習での40㎞走にある程度の手ごたえが出始めた3年目。2018年3月のびわ湖毎日マラソンで初舞台を踏む。

 ここで中村は27㎞を過ぎてから先頭集団から離され、30㎞から5㎞ごとのラップが16分台に落ちた。しかし大きく崩れることなく2時間10分51秒(7位)でまとめ、MGC出場権を獲得している。一度はペースダウンしながらもラストの2.195㎞は6分46秒。ズルズルと落ち込まず、最後にペースを上げた点が印象的なレースだった。

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