桐生祥秀が日本人スプリンターの意識を変えた日。「世界と勝負する」 (6ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News

「10秒01と9秒98の距離の違いは30㎝。それを縮めてここまで来るのに時間がかかったけれど、今はまだ9秒台を出してやっと世界のスタート地点に立っただけなので、いわばまだゼロ地点。ここから先が長いのだと思います。9秒台を出したから満足、という人は誰もいないと思うし、今後、日本記録はどんどん変わっていくと思います。自分もその記録を0秒01でも縮めたいので、これからはみんなが想像できないくらい日本の陸上界も変わっていくと思と思います」(桐生)

 13年4月に10秒01を出した時から、桐生は9秒台への期待という重荷をずっと背負い続けてきた。そして、「それを誰よりも最初に実現したい」と言い続けてきた。その桐生が実現した9秒98だったからこそ、大きな意義があったと言える。

 この瞬間、日本人スプリンターにとって9秒台という記録が、乗り越えるべき壁から"世界との勝負"に勝つための現実的な目標へと変わったのは間違いない。
 
"日本人初の9秒台"という重荷を下ろせたからこそ、今の桐生はライバルたちと切磋琢磨しながら勝つことにフォーカスして、自身が描く最高のパフォーマンスを追求している。

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