大迫傑の日本新記録樹立が示す「日本男子マラソン界の進化」 (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 こう話す大迫は、30~35kmのペースを14分56秒まで上げる底力を発揮。15分37秒に落ちた井上を一気に突き放した。さらに、その後は前から落ちてくる選手を拾いながら、1km3分弱のペースを維持。40kmまで15分15秒でカバーして5位に浮上し、最後は4位でゴールした。

「練習を大きく変えたということはなく、地道にやってきた結果だと思う。一つひとつのマラソンごとに成長を感じていますが、それが今回はたまたま記録として出たと感じています。4位でしたが、東京五輪へ一歩近づけたのはよかったです」

 記録を狙いながら、ほかの日本人選手に先着しなければいけなかった井上に比べ、大迫は日本記録が更新されなければ、日本記録保持者として五輪代表の有力候補のままである。精神的な余裕があったからこそ、井上に離された時も、冷静に前を見ながらレースを組み立てることができたのだろう。そのことは「記録はあまり考えていなかった。最後の3~4kmで日本記録もいけるのかなと思ったくらい」というレース後の大迫の言葉に表われている。

 日本陸連の瀬古利彦マラソン強化戦略プロジェクトリーダーは、「大迫くんの日本記録樹立は、井上くんが30km過ぎまで前にいたからこそ出たのだと思う。記録に関しては、チェレンジした井上くんに感謝しなければいけないと思う」と話す。

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