2020.02.17

アテネ五輪マラソンで野口みずきは決めていた。
作戦的中で金メダル!

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

 レース当日の昼過ぎには、あまりの暑さに「本当にこんななかで走るのかな。レースが中止にならないかなと思っていた」と野口は言う。だが、スタートしてしまうと頭の中にあったのは、藤田監督に指示された「給水は絶対に取れ」ということと、「25kmからスパートしろ」という2点だけだった。

「自分で予想していたわけではないんですが、集団で行って下りで仕掛ける展開になると、スピードランナーたちがみんな行ってしまうだろうから、下りのヘタな私は絶対に対応できない、と感じていたんです。スイスの合宿で下り坂の練習はちゃんとしてきたけど、それでも何が起こるかわからない。それも理解したうえでの『あぁ、25km(での勝負)だな』と思っていました」

 最初の5kmを走っただけで「給水で失敗したら最後までもたない」と感じ、集中度が増した。さらに野口は「集団の中にいると、周りの選手の体が発する熱気で暑い」と、集団の先頭で風を受ける外側に位置する冷静な判断もできていた。ペースは当然遅いだろうと考え、タイムもまったく気にしなかった。

 それでも、スパート地点が近づくにつれて不安になってきた。本当に行けるのだろうか......。23kmあたりになると、迷いも出た。