2020.02.07

室伏広治は五輪優勝後に思った。
「金メダルよりも重要なものがある」

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by PHOTO KISHIMOTO

「まずはその日の調子を早くつかんで、自分の投擲に持っていくことを考えていました。ただ、細かい部分と大きな部分をつなぎ合わせたところで投げているから、そこの細かい部分の修正ポイントを見つけていくのが難しいんです」

 そう話していた室伏だが、4投目になると表情も引き締まり、82m35まで記録を伸ばして追い上げ態勢に入った。

 5投目は、3回転目からそれまでよりググっと加速するようになった。惜しくも左側の防御ネットに当たってファールになったが、それは吉兆のようにも見えた。この年から取り組んでいた、ハンマーヘッドの加速を意識する技術改良の成果が出ていたからだ。本人は「気持ちが急ぎすぎた」と反省するが、6月のアメリカの大会では同じようなミスが出た次の投擲で、その時点でのシーズン世界1位となる82m65をマークしていた。

 このミスを修正し、集中力をさらに高めて臨んだのが、優勝へわずかに届かなかった6投目だったのだ。

 試合後の室伏は、落ち着いた表情で次のように話した。