神野大地は東京マラソン2時間8分台も
視野。有言実行の金メダル獲得

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun

神野プロジェクト  Road to 2020(40)

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 有言実行だ。

「金メダルを獲る」

 神野大地(セルソース)がそう宣言して挑んだアジアマラソン選手権大会。ゴール寸前にまさかの出来事が起こったが、ラストスパートで相手をかわし、右手を高々と突き上げてフィニッシュラインを切った。

 マラソンに挑戦して7レース目で、初めて日本代表としてレースに臨んだ。中国という慣れない環境のなか、2時間12分18秒で駆け抜け、念願の金メダルを獲得したのである。

アジアマラソン選手権大会で自身初の優勝を飾った神野大地アジアマラソン選手権大会で自身初の優勝を飾った神野大地 当日の気温は18度。曇りで暑さもなく、コンディションはよかった。レースはスローペースでスタートし、神野もはやる気持ちを抑えて1キロ3分12秒前後のペースを刻んだ。すると、6キロ地点で北朝鮮のリ・ガンボムが集団から抜け出した。

「北朝鮮の選手が前に出ていったのですが、まだ6キロですし、そこで無理にペースを上げてついていくのではなく、42.195キロで勝てばいいと思っていたので、相手に合わせるというよりも自分のリズムで走ることを考えました」

 そのリ・ガンボムはどんどんスピードを上げ、後続集団を突き放していった。神野は2位集団の先頭に立ち、グループを引っ張っていった。途中、力を溜めるために下がろうとすると、ほかの選手も下がり出してペースが落ちた。

「このままゆっくり2位集団で走っていても、前との差が開く一方になる」

 危機感を覚えた神野は、14キロあたりからペースを上げ、1キロをほぼ3分ペースで走った。すると2位集団の塊が見えなくなり、大きく神野が抜け出した。

「ハーフの折り返し地点でトップと30~40秒差ぐらいありました。30キロ地点はさらに差が開いて、1分ぐらいの差になったんです。差は大きいなって思っていたのですが、まだ余力は残っていました。このままペースを落とさずに走ろうと思っていたら、どんどん前の選手の姿が大きくなってきて......」

 じわじわと前との距離を詰めていくと、もう一度折り返しポイントがある39キロ地点でリ・ガンボムとすれ違った。

「表情は結構へばっていたんですけど、足は動いていたんです。残りの距離を考えると、金メダルはちょっと難しいかなって思っていました。でも、最後まであきらめずに差を縮めようと。40キロを越えてもなかなか追いつかなくて、これは厳しいなって思っていたら、前の選手(リ・ガンボム)が突然、コースを外れていったんです」

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