東海大・鬼塚翔太が苦境を乗り越え復調。箱根での力走を盟友に誓う (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sho Tamura/AFLO SPORT

「レースできつくなった時、自分の弱さが出てしまうところがあるんです。タイムが出ないのも、そういった部分に問題があると思います。練習とか、やっていることは間違っていないと思うんです。今は耐える時ですけど、この先の競技人生はまだ長いので、いいタイムを出すための我慢の時期だと思って乗り越えていきたい」

 常々、両角監督は「陸上は精神だ」と言う。強い気持ちが、競り合いに勝ち、最後の粘りを生むという。鬼塚もそれを理解して自己改革に取り組んでおり、決して走りがどん底というわけではない。

 今年11月の八王子ロングディスタンスの1万mでは28分37秒36と復調をアピールし、箱根組の合宿でも順調に練習メニューを消化しているという。メンタルさえ追いつけば、間違いなくいい走りができる。ただ、今年は3年生を筆頭に下級生の調子がいい。4年生の鬼塚といえども、安泰ではない。

「今まで黄金世代と言われて期待されて、結果もまずまず出してきたけど、今年は3年生にかなり救われた。自分ら4年生がかなり頑張らないといけないというのはみんな思っていることなので、最後の箱根は3年生と力を合わせて、全員で結果を出していければいいかなと思います」

 激しい区間エントリー争いのなか、鬼塚が目指すのは走り慣れたコースだ。

「走らせてもらえるなら1区で結果を出したいですね。今回の1区には、東京国際大の留学生が出てきそうなので、例年のようなスローではなく、高速レースになると思っています。トレーニングはいい感じで積めているし、不安はないので、ビビらず攻めの走りでついていって、勝つレースができればいいかなと」

 レースの話になると、鬼塚の表情に覇気が宿り、口調も鋭さが増す。

 また強く走りたいと思うのには、もうひとつ理由がある。鬼塚とともに1年の時から一緒にチームを支えてきた關颯人(4年)が16名のメンバーから外れた。

「關は故障でかなり苦しんでいて、箱根も外れてしまった。4年生は關の気持ちを考えて走ってほしいなと思うし、もちろん自分もあいつのために頑張りたい」

 レースでの鬼塚は、美しいフォームゆえ華麗に走り抜けるイメージがあるが、最後の箱根はド根性丸出しの姿を見せてもらいたい。それができれば、苦しんだ2年間の壁を破れるかもしれない。それが東海大の、そして箱根連覇のスタートになるはずだ。

  『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』

【発売日】2019年10月4日

【発行】集英社

【定価】1,300円(本体)+税

【内容】2019年1月3日──。 往路2位から復路8区の大逆転劇で みごと箱根駅伝初優勝を飾った東海大学。 その“栄光”にいたる道程にあった苦難や葛藤、 当日のレース模様などを 監督、コーチ、選手たちの証言を交えて 鮮やかに描き出す。

そして、「黄金世代」と呼ばれて輝きを放ってきた 現4年生たちが迎える学生最後のシーズン。彼らはどのような決意で箱根連覇に挑むのか。 出雲・全日本も含む3冠獲得を目指し、東海大学の「黄金世代」が駅伝シーズンに向け、再び走り出す 。

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