箱根連覇へ東海大が描く青写真。
監督は4年生ふたりをキーマンに指名

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Jiji Photo

「今年の箱根は例年より自信を持って臨めそうですね」

 両角監督の表情には昨年とは異なり、少し余裕がある。

 昨年は出雲3位、全日本2位と成績を徐々に上げ、最後に箱根で勝った。だが、内情は中島と阪口が本番ギリギリまで回復が遅れ、彼らの誰かひとりでも抜けると勝つのが難しいチームだった。

 だが今年は、個々の選手が力をつけて、山以外はどの選手がどこを走っても区間3位内、あるいは区間賞を狙えるだけの力を持つ。それを裏付けるのが、週間の走行距離だ。昨年の210キロから230キロに増え、その結果、ハーフのタイムが向上し、それがチームの強さにつながっている。

 東海大は1万mの上位10名のタイムは青学大に次いで2位だが、東海大の主力選手の何名か1万mのタイムを持っておらず、両角監督はそれほど気にしていない。今年はハーフを走ることに集中して練習してきたため、1万mのデータでは青学大に負けているが、実際は名取が札幌ハーフで優勝するなど、個々の走力は相当に上がっている。

「今年は昨年と違ってプラスアルファの要素が増えてきている。たとえば、全日本に勝てたことは大きいですし、黄金世代だけではなく、3年生や市村、松崎が台頭してきたことは非常に心強いです」

 両角監督は、そう言って表情を崩した。

 今年は黄金世代よりも好調な3年生が注目されているが、何が彼らをあそこまで成長させたのだろうか。個人的には東海大の育成システムが確立できてきたことが大きいと思っているが、指揮官はどういう見方をしていのか。

「今の3年生があるのは4年生の力が大きいですね。4年生が彼らを引っ張り上げたんですよ。自分たちが抜けたあとのことまで考えてフォローしてくれた結果だと思うんです」

 故障でキャプテンの館澤が不在の中、副キャプテンの西川雄一朗は、チームの意識を高めようと常に厳しい言葉を放ち、下級生を叱咤激励しつづけた。一方、館澤は走れなくてもい中、下級生の選手の成長や今後のチームについて常に考えていた。

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