五輪マラソンの東京コース、幻と消えた「絶好のフリー観戦ポイント」 (4ページ目)

  • 門脇正法●取材・文 text by Kadowaki Masanori
  • 門脇そら●撮影 photo by Kadowaki Sora

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 こうして、MGCは終了した。

 このレースで男子マラソンは中村匠吾選手と服部勇馬選手、女子マラソンは前田穂南選手と鈴木亜由子選手が東京五輪の日本代表に内定した。

 しかし、これらの選手たちが、今回、このコースを走ったというホームアドバンテージを五輪本番で活かすことはできない。競技関係者やボランティアたちが、このコースで得たいろいろな体験を役立てることもできない。まして、このレースを沿道で観戦していた52万5000人の観客たちが、来年、この場所に集うことはもはや......。

 東京から札幌にマラソンのコースが移ってしまうことで、東京コースの準備はすべてが絵に描いた餅に終わり、ファンが密かに狙っていた「絶好のポイント」でのフリー観戦作戦もみな水泡に帰してしまったのである。

激走する鈴木亜由子選手。この経験値が本番で使えないのは残念激走する鈴木亜由子選手。この経験値が本番で使えないのは残念

 一方、IOCのトーマス・バッハ会長からは小池東京都知事に対し、今回のMGCで活用した東京のマラソンコースを使って、2020年のオリンピック・パラリンピックの大会後に『オリンピックセレブレーションマラソン』をIOCと東京都が一緒になって開催したいという、札幌変更の代替案の提案があった。

 当たり前のことだが、それで今回の件がチャラになってしまうわけではない。

 が、ハッと気づけば、東京五輪は「東京」とは言ってはいるものの、すでに今回の決定以前に、東京都以外にも、北海道・宮城県・福島県・埼玉県・茨城県・千葉県・神奈川県・山梨県・静岡県の1道8県に競技開催地がまたがっているのも事実になる。

 今回の男女マラソンと男女競歩の札幌開催決定は、「東京」五輪というよりも、「日本」五輪という枠組みの中では、一応、ありと言えばありと言えるのかも......。

 そうでも考えないと、来年の東京五輪最大の生観戦のチャンスを失ってしまった東京都民には、やってられないドタバタ劇だった。

(須賀 和●協力 cooperation by Suga Yamato)

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