プロランナー神野大地の重大決意。「山の神」の肩書きはもういらない (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

---- プロランナーとしての成功とは?

「正直、まだ何が成功なのか明確にはわかっていないです。やっていくなかで見えてくるものかなと。ただ、たとえば今までは東京五輪に向けて、そのためだけにガチガチにやってきたけど、もうそういうやり方はしません。少しでも速く走るために練習をしていくけど、その途中にファイナルチャレンジがるという感じです。だから、それが終わったら『4年後のパリ五輪に向けてやります』というのもないです。身近な目標をクリアしていって、パリ五輪の直前になって戦える状態にレベルアップできていれば、パリが目標になるかもしれないですけど」

---- 目標を縮小化するということすか? でも、東京五輪という大きな目標があったからこそ、苦しい練習耐えてこられたし、レベルアップできたのでは?

「たしかに、東京五輪があったから自分のレベルを上げられたと思います。でも東京五輪は、いま振り返ると僕にとって2段階、3段階上の飛び級の目標だった。2時間10分台の選手が世界選手権や五輪を狙うというのはやっぱり違うかなと。2時間7~8分の記録が出た時、次の目標が出てくると思うんで、まずは現実的に狙えるところを目標にやっていきます。僕の陸上人生は小さな目標をクリアして成長してきた。その原点に返る感じです」

 大きな目標を立てず、地に足をつけて地道にレベルアップを図るということは理解できた。そういう意識で高校、大学と徐々にレベルアップしてきたことを考えれば、「原点回帰」が神野のリスタートになるのだろう。

 また、マラソンランナーとしての成功を目指すと、あえて宣言したのは結果だけにとらわれない様々な活動を考えているからだろう。それは陸上界では異質かもしれないが、プロの世界では別に珍しいことではない。たとえば、サーフィンやスノーボードなどは、コンペティターとライフスタイルをメインにして活動するプロにわかれている。大会に出て勝利を目指すプロがいれば、自分が好きな海や山で撮影をしたり、テクニックやライフスタイルをビデオにして販売したりするプロもいる。

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