「黄金世代」から「黄金トリオ」へ。箱根連覇へ東海大の3年生が好調だ (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 最初は飯田のうしろをついていく走りで、アクセルを踏むことはなかったが、4キロ地点で並ぶと、名取は一気にギアを上げた。

「うしろをついていったんですけど、ペースがなかなか上がらなかったんです。このままついていって、ラスト勝負というよりも、自分のペースで押していったらどこかで離れてくれるだろうと思って、前にいきました」

 早い仕掛けだと思ったが、名取には自信があった。それは、昨年の夏から西出コーチが「名取にしかできないハードな練習」と言うほど、厳しい練習をコツコツと積み重ね、今年は結果を出してきたという自負があったからにほかならない。

 実際、レースで結果を出すたびに表情が明るくなり、言葉の端々からも自信が感じられるようになった。その1年の積み重ねが、地力となって表れた。

「10キロまでは余裕を持って走れました。うしろは見なかったので、どのくらい離れているかわからなかったのですが、12キロ地点でチームメイトが42秒というパネルを出してくれたんです。それで『もう大丈夫かな』って思いました」

 名取はその後もさらに差をつけ、ゴールラインを駆け抜けた。佐久長聖高校(長野)3年の時、全国高校駅伝の1区を走り区間賞を獲って以来、約3年ぶりに駅伝の舞台に復帰し、最高の結果を出した。

「今まで長かったです。でも、今日は楽しかった。やっと戻って来られたという感じですね」

 そう言って、名取はニヤリと笑った。

 両角監督は、ようやく眠りから覚めた逸材に目を細めた。

「名取は強かったですね。最初から突っ込みすぎず、落ち着いていました。大学では初めての駅伝ですし、タイムはよくて58分台かなって思っていたんですが、あの8区の難しいコースを57分46秒で走るとは思っていませんでした。札幌ハーフでの62分44秒といい、非常に成長しました。名取が苦しんでいたのをみんな見てきたし、彼に華を持たせてやりたいという思いが強かったんだと思うんです。それが実現できてよかったですし、チームの戦力としても大きい。"両角再生工場"完成ですね」

 そう言って、両角監督は満足そうな表情を見せた。

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