東海大が主力抜きで全日本制覇。箱根で史上最強メンバーが完成する (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kyodo News

「トップに立てたのは、自分の力というよりも塩澤さん、西田さんのおかげ。西山さんを抜くまでは調子はよかったんですが、抜いてからは本当にきつくて......早く終わってくれないかなぁって思っていました(笑)。追いつくまでは楽しくて、追いついたあとは地獄でした」

 市村本人は「きつい」と言ったが、腕を振り、ダイナミックな走りは変わらない。気温が上がっても、レースに集中して走っているのが見て取れた。市村はそのまま差を広げて、トップで6区の郡司に襷を渡した。

 両角監督は、市村を「まずまずの走り」と評価した。

「区間順位(7位)はよくなかったですけど、西山くんが落ちてきた時、きついなかで勝負し、先頭に立てた。それはよかったと思います」

 市村は出雲駅伝に続き、今回は12.4キロを走り切ったが、内容は満足していなかった。

「長い距離に少しずつ対応できているのかなと思ったんですけど、終わってみるとかなりきつかったので、箱根はこのままじゃまずいなって思いました。最初突っ込みすぎて、10キロぐらいならいいですけど、ハーフになると致命傷になるので、ペース配分が課題ですし、もう少し距離への対応をしないといけないと思います」

 今後については、上尾ハーフを走り、合宿で距離に対する耐性をつけていくという。箱根まで2カ月あり、市村のポテンシャルがあれば20キロを走れるだけでなく、勝負できる走力を身につけられるだろう。

「欲が出てきました。ここまできたら、箱根も走らないといけないなって思います」

 市村はそう言って、笑みを見せた。

 数日前、花咲徳栄高校に通う弟・竜樹が埼玉県駅伝の4区で2位という結果を出した。そんな弟の活躍に刺激を受けた市村は、西山を逆転し、さらに19秒差をつけてトップで襷を渡した。

 駅伝はタイムも大事だが、区間内で目の前の相手との競争に勝ち、ダメージを与え、いい流れをつくることが重要だ。襷を郡司に渡す際、「よくやった」と言われたそうだが、その言葉どおり、市村の走りは後続の選手に勢いと勇気を与えたのである。

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