令和になり「戦国駅伝」に突入。國學院大の出雲Vは偶然ではなく必然だ (2ページ目)

  • 酒井政人●取材・文 text by Sakai Masato
  • photo by Kyodo News

 そして出雲駅伝の大会前日、発表されたオーダーを見て「國學院大に"追い風"が吹いている」と感じたのは筆者だけではないだろう。

 昨季の箱根王者でトラックのスピードナンバー1の東海大は、館澤亨次(4年)を故障で欠いた。さらに、9月29日の東海大記録会5000mで14分00秒35を出した關颯人(4年)と、14分01秒58の小松陽平(4年)を外してきたのだ。

 また、青山学院大はエース格の鈴木塁人(4年)と、昨年の全日本駅伝5区で区間賞を獲得した吉田祐也(4年)。東洋大は1万m28分台の渡邉奏太(4年)と吉川洋次(3年)がメンバーから外れており、両校は選手層の薄さが最終6区の人選に表れていた。

「3強」が主力を欠いたなか、駒澤大と國學院大はほぼ順当な顔ぶれが並び、今回は5校の争いが予想された。國學院大は1区に藤木、3区に浦野、6区に土方と"三本柱"を主要3区間に配置。日本インカレの結果を考えても、優勝のチャンスは十分にあった。

 そして1区藤木が5位で発進すると、2区中西で3位に浮上。3区浦野は、青山学院大の吉田圭太(3年)と駒澤大の田澤廉(1年)を引っ張る形になり、1区で飛び出した北海道学連選抜をかわしてトップに立った。しかし、田澤のスパートに対応できず、後続から来た東洋大・相澤晃(4年)にも追いつかれた。

 それでも4区の青木祐人(4年)と5区茂原大悟(4年)が共に区間5位でまとめて、アンカー勝負に持ち込むことに成功。最後は主将・土方が、埼玉栄高時代のチームメイトで、ユニバーシアードハーフマラソン銀メダルの駒澤大・中村大聖(4年)を逆転し、初優勝をさらった。

 今季のチームスローガンは「歴史を変える挑戦」。國學院大は出雲駅伝で新王者となり、想定以上のスタートダッシュを決めた。次は8名で争われる全日本駅伝になるが、今回の出雲駅伝メンバー6人に加えて、1万m28分台の島﨑、前回1区を務めた臼井健太(3年)らがいるため、再び優勝争いを演じることができるだろう。 

 そして箱根駅伝は、「総合3位以内」と「往路優勝」を狙っている。前回の往路3位メンバーの5人が残っており、出雲駅伝6区で大逆転&区間賞の土方は2区で、前回(1時間7分53秒の区間7位)以上の走りが期待できるし、何よりも前回5区で区間賞を獲得した浦野の存在が大きい。出雲駅伝3区では区間3位(区間新)と悔しい走りになったが、7月には1万mで今季日本人学生最高の28分25秒45をマークするなど、大きく成長した。来年の正月には、「山の神」と呼ばれるくらいの爆走を見せる可能性もある。

 7年前の出雲駅伝では青山学院大が過去最高10位から初優勝を飾り、その後、黄金時代を築いた。出雲駅伝の初勝利がチームをさらに強くすることは間違いない。これから國學院大がどんな進化を遂げていくのか。再び、"戦国駅伝"となった令和の時代で、新たな主役になるかもしれない。

  『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』

【発売日】2019年10月4日

【発行】集英社

【定価】1,300円(本体)+税

【内容】2019年1月3日──。 往路2位から復路8区の大逆転劇で みごと箱根駅伝初優勝を飾った東海大学。 その“栄光”にいたる道程にあった苦難や葛藤、 当日のレース模様などを 監督、コーチ、選手たちの証言を交えて 鮮やかに描き出す。

そして、「黄金世代」と呼ばれて輝きを放ってきた 現4年生たちが迎える学生最後のシーズン。彼らはどのような決意で箱根連覇に挑むのか。 出雲・全日本も含む3冠獲得を目指し、東海大学の「黄金世代」が駅伝シーズンに向け、再び走り出す 。

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