東海大の黄金世代に「勝ち意識」の呪縛。
出雲駅伝で4位も収穫はあった

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Nikkan sports/AFLO

 そのなかでただひとり、阪口竜平(りょうへい/4年)は敗れた責任を背負い、待機所のベンチで涙をこぼしていた。本人は「力不足」と語ったが、阪口に限ってそれは当てはまらないし、「タッペイ(阪口の愛称)でダメなら仕方ない」と小松が言うように、チームメイトからの信頼は揺るぎない。

 あらためて振り返ると、やはり"駅伝男"の館澤亨次(たてざわ・りょうじ/4年)の不在が大きかった。館澤の走りがいつもチームに勢いを与えていたし、何がなんでも勝ちたいという気持ちを一番発散させていた。今回の東海大に関しては、これまで館澤が担っていた部分が少し淡白だったように思う。キャプテンである館澤不在のなか、副キャプテンとしてチームをまとめ、昨年に続いて1区を走った西川雄一朗(4年)は、終始厳しい表情だった。

「2、3年生が頑張ってくれたけど、下の世代に頼ってばかりじゃダメです。今日は4年生がしっかり走っていれば勝てたと思うんです。そのことを4年生のなかで共有して、ここで負けたことをいい薬にできるように、次に向けてやっていかないといけない。もう負けるわけにはいかないんで......

 西川をはじめ、4年生は少し気負っているように見えた。箱根駅伝優勝後は、当然だが他の大学からのマークが厳しくなり、「学生駅伝3冠」という目標を掲げれば、それを阻止しようと本気で潰しにくる。

 また、今回の出雲駅伝優勝で国学院大は自信を持っただろうし、駒澤大も強さを見せた。さらに、東洋大、青学大も地力があるので、必ず次は巻き返してくるだろう。

 そういうなかでも結果を出さないといけないのだが、その意識が強すぎるように思えた。2、3年がノビノビした走りを見せた一方で、4年生がもうひとつだったのは、その意識に縛られているからではないか。動きの硬い走りを見ていると、そう思わざるを得なかった。

 もちろん、全日本、箱根に勝つためには4年生の力が必要だが、もっと楽な気持ちでレースに臨んでもいいのではないかと思う。本来、ノビノビした明るさと楽しく走ることが東海大のチームカラーのはずだ。

「あとひとりというところが、しっかり走れていなかったかなと......

 両角監督は、今回の出雲についてそう語った。

 今年1月の箱根駅伝、東海大はノーミスで優勝を勝ち取った。いかにミスをなくすか。その重要性をあらためて感じさせられた出雲駅伝の4位だった。

  『箱根奪取 東海大・スピード世代 結実のとき』

【発売日】2019年10月4日

【発行】集英社

【定価】1,300円(本体)+税

【内容】2019年1月3日──。 往路2位から復路8区の大逆転劇で みごと箱根駅伝初優勝を飾った東海大学。 その“栄光”にいたる道程にあった苦難や葛藤、 当日のレース模様などを 監督、コーチ、選手たちの証言を交えて 鮮やかに描き出す。

そして、「黄金世代」と呼ばれて輝きを放ってきた 現4年生たちが迎える学生最後のシーズン。彼らはどのような決意で箱根連覇に挑むのか。 出雲・全日本も含む3冠獲得を目指し、東海大学の「黄金世代」が駅伝シーズンに向け、再び走り出す 。

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