鈴木雄介、金獲得の裏に恐怖心「どんなペースなら最後まで行けるか」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文・写真 text&photo by Oriyama Toshimi(人物)
  • photo by Nakamura Hiroyuki(競技)

「30kmを過ぎてからは疲労が徐々に出てきました。40kmまではトイレに行ったことを考えれば、ペースはそれまでのレベルを維持できていたので大丈夫かなと思っていましたが、体のキツさがどんどん蓄積してきて、脱水症状になりそうな感覚も強くなってきていました」

レースから12時間後、金メダル獲得の喜びとともに東京五輪に向けて語ってくれたレースから12時間後、金メダル獲得の喜びとともに東京五輪に向けて語ってくれた そんな時に決断したのは、毎周回、しっかり止まって給水を取るということだった。それは元々、今村文男コーチとも話していたことで、「止まってしっかり給水を取ればその間に心拍数も下がる」という考えもあった。

「今村コーチからは『タイムはそれほどロスしないから、落ち着いて飲んでからスタートすればいい』と言われていましたが、1回目はさすがに勇気がいりましたね。その時は『3着になっても東京五輪の内定が取れればいいから止まって飲もう』と思って。でも一度止まって飲んでみたら、歩きながら飲むより飲みやすいことに気がつきました」

 40km通過時点では、2位の中国の選手との差も3分23秒ついていたこともあり、金メダルを獲りたいという気持ちが強くなった。最初からラスト10kmだけは、コーチにラップタイムを伝えてくれるように頼んでおり、実際に止まって給水を飲んでもその間の1周2kmのラップタイムは、10分30秒くらいだったのを確認すると、「他の選手がけっこうな速度で追いかけてこない限り、捕えられることはないだろう」と思った。

「自分もきついけど追いかける方もきついはずだから、止まっても大丈夫だなと。ただ、ラスト1kmまでは追いつかれるというより、自分が止まってしまう不安はありました。それでもよかったのは、(周回遅れの)前の選手を追いかけられたことですね。その選手と同じくらいで行けば、後ろから追いつかれることはないなと思ったので、1回休んで抜かれて、追いかけて抜き返すといういい循環ができました」

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