ラグビーの経験が生きている。寺田明日香は2度目の陸上人生を楽しむ (4ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News(競技)、Sportiva(人物)

 今の寺田があるのは、陸上競技を離れていた6年間の経験があったからこそ。そして強くなるために必要だと思うものを、貪欲に吸収している。

「以前は新しいことをやってみようと言われても『うーん』という感じだったのが、今は『面白いね、やってみよう』となり、ダメだったらダメでいいし、よかったら続けるという感じでいろいろ試せるようになった」

 寺田が目標にするのは、東京五輪の標準記録12秒84であり、さらにはその先で世界と戦うための12秒6台だ。そのために必要なのは100m11秒3台になる。

「それはもう明確ですね。自分が目標とするレベルまでいくためには、足を速くすることと、ハードルの精度を上げることしかない。まずは走りがよくなることが一番。中村先生がずっと言っていたことを、今になってわかってきています」

 11秒5で走った時に必要なハードリング技術は、ほぼ手の内に入れているといっていいだろう。だが11秒3で走れるようになった時には、そのスピードに対応する技術も必要になってくる。柔軟な発想と思考を持たなくてはいけないが、寺田はこの6年間に結婚、学業、出産、育児、ラグビーなど、さまざまなことを経験したことで、それができるという自信をつけてきた。

 寺田は、現在ドーハで開催されている世界選手権で、10月5日から100mハードルに出場する。2度目の陸上人生を、思い切り楽しむ彼女に注目したい。

(おわり)

プロフィール
寺田明日香(てらだ・あすか)
1990年1月14日生まれ。北海道・札幌市出身。
日本選手権で3連覇を達成するなど実力の持ち主だが、2013年、23歳の時に陸上競技を引退。結婚出産を経て、2017年には7人制ラグビーにも挑戦したが、2019年からは再び陸上競技に復帰を果たした。

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