ラグビーの経験が生きている。寺田明日香は2度目の陸上人生を楽しむ (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News(競技)、Sportiva(人物)

 そんな意識が変化あったからなのか、ハードリングも以前よりスムーズになった感覚がある。

「ぶつかると痛いという気持ちから少し力んでしまいますが、そんな感覚がなくなったので、力まずにシュッと行けるようになり、いい力加減になってぶつからなくなった」

今は新しいことにも積極的にチャレンジするようになったという今は新しいことにも積極的にチャレンジするようになったという それに加え、ラグビーでは常に相手の動きを見て自分の動きを考えたり、仲間にそれを伝えながらプレーする必要があった。それを経験したことで、すべての状況を冷静に見られる能力が身についた。

「集中のしかたが以前とは違ってきましたね。ラグビーだとイレギュラーなことがすごく起きるし、子育てもそうで、気持ちが入り過ぎるとイレギュラーなことに対応できなくなる。ハードルは走るだけのレースとは違い、隣のレーンの選手の腕がぶつかったり、アクシデントのある種目。

 だから今は逆に気持ちを入れすぎず、スタート直前でもほかのことを見ていたり、風の音を聞いていたりするし、雰囲気自体を感じ取るようにしていて。だから何かイレギュラーなことが起きても普通に『こうすればいいな』と考えるようになってきました」

 そんな意識を唯一持てなかったのが、今年の日本選手権の決勝だった。スタート前の寺田は、「以前のように集中しなければいけないと思ってしまい、意識し過ぎた」と振り返る。その反省から、13秒00を出した時も、12秒97の時もスタート前は笑顔だった。

「以前は速く走るためには、足を速く動かせばいいとしか考えなかった。でも今はそのためには、どういう動作から、どういう部位を使うのが必要で、それをやった結果、速い動きができると考えています。ハードルでは振り上げた前足を早く下ろすことが大事で、以前は下ろすことばかり考えていたのが、今はその前段階で何が必要か考えるようになりました」

「もし陸上以外の競技をやることなく、再び陸上に戻っていたら、13秒05を出した時の自分を追いかけていたと思う」と寺田は言う。

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