6年ぶり復帰後、即日本記録更新。なぜ寺田明日香は驚速で進化した? (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Kyodo News(競技)、Sportiva(人物)

 00年に金沢イボンヌが出して以来、破られていなかった日本記録の13秒00。ただ、今年の世界選手権参加標準記録が12秒98となっていることもあり、寺田はそれが壁とは感じていなかった。8月に13秒00で走った時も、コーチとは「標準記録まであと数cmだ」と笑いながら話していたという。

「ずっと陸上を続けていたら0秒01の重みを感じていたかもしれないけど、復帰してからはその重みはまったく感じなかったです。考えることはラグビーの方がいっぱいあったから、その重みを感じなくなったのか、笑っていられた。それがよかったのかなと思いますね」

 今は順調に記録を更新している寺田だが、一度引退する以前は思いどおりにタイムを伸ばせずにいた。陸上を一時中断する前の自己ベストは、100mハードルで13秒05。100mは11秒71だった。だが11年以降、100mは走らず、ハードルも13秒52、13秒57がシーズンベストと不調に陥った。

 そのころをこう振り返る。

「高校時代は普通に生活していても太らなかったのが、20歳以降はケガもあったけど、空気を吸っても太る感じで摂食障害にもなって体重の変動が大きくなった」

 気持ち的にも不安定で、自分がいることでチームの空気が重くなると感じるようになり、チームメイトを避けるようになっていた。

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