北京五輪リレー、栄光の舞台裏。
末續慎吾は「早く帰りたかった」

  • 佐久間秀実●取材・文 text by Sakuma Hidemi
  • 佐藤博之●撮影 photo by Sato Hiroyuki

――現在も現役を続けていますが、トレーニングの量や質は変化しましたか?

「僕のイメージは、練習の量が60パーセント、質が40パーセントの割合でしょうか。本来は質が高いほうがいいみたいですけど。23歳か24歳の頃から練習量が減って、質の部分が高まっていきましたね。今思えば、海外のさまざまな技術、情報をもっと取り入れてもよかったのかなと思います」

――末續さんといえば、「ナンバ走り」が話題となりましたが。

「僕ならではの走り方を追求しているときに、練習でナンバ走りっぽいことをやり、『使えるかもしれない』と思って始めたんです。日本古来の技術を取り入れること、日本人に合った方法を取り入れることを考えていましたからね。ナンバ走りは身につけていないですし、まだ試行錯誤中なんですが、フレーズがキャッチーなのでひとり歩きしていた時がありましたね」

――今後の展望について、どのように考えていますか?

「僕が運営する『EAGLERUN』というプロジェクトでは、陸上をチャンピオンスポーツとして捉えて、あらゆる表現の方法を追求したいと考えています。僕が指導した子供たちが世界で戦う。僕自身が生涯スポーツとしてマスターズに出場して走る。そういったことを目的としたコミュニティーを作り、みんなで走っていきたいです」

――末續さんにとって陸上とは?

「芸術ですかね。陸上は答えのない世界なんですが、僕は『なぜ、今走っているのですか?』といった疑問を持たれることに意味があると思っています。たとえば、世の中に出して「ふーん」と何も感じられないものを芸術だとは思いません。走ることで「なんで?」と興味を持たれるように、陸上を芸術として追求していくことを、『EAGLERUN』の活動を通してやっていきたいと思っています」

(後編につづく)

■プロフィール 末續慎吾(すえつぐ・しんご)
 1980年6月2日、熊本県生まれ。200m日本記録保持者(20秒03)。2003年世界陸上パリ大会200mで銅メダル、2008年北京五輪4×100mリレーで銀メダルを獲得。現在も現役の選手としてレースに出場する傍ら、神奈川県平塚市を拠点にした陸上クラブ「EAGLERUN」で主宰を務める。


取材協力:Café&Meal MUJIラスカ平塚

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