東海大の飯澤千翔が日本インカレV。負傷の主将に代わり出雲に名乗り (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 ラスト100mになると、うしろを振り返ることなく、前だけを見つめる飯澤のギアが上がった。3段ロケットさながらのラストスパート。これこそ飯澤の強さである。

 関東インカレでも先をいく館澤をラスト100mでとらえ、最後は胸の差で勝利した。「スプリント力はピカイチ」と西田壮志(たけし/3年)が語るように、今回も圧倒的なスピードを見せてフィニッシュラインを切った。

 3分4307。2位の小林に0.40秒差をつけての優勝だった。

「勝ててよかったです。両角(速)監督からは4分でもいいから1位を獲ってこいと言われました。タイムは気にしていなかったので、勝てたことは大きな収穫になりました」

 レースを見ていた両角監督は、あらためて飯澤の強さを感じていた。

「レース展開に自信が出ていましたね。留学生の選手が前に出たら、それについていって勝つレースをしていたので、いいレースでした。最後の300mの時、どこで(ラストスパートを)いこうか迷っていた。それぐらい余裕があったと思うので、本人の思い描くレースができたんじゃないですかね」

 両角監督が安堵した表情を見せたのは、惨敗した日本選手権以降、調子の上がらなかった飯澤をそばで見ていたからだ。

 飯澤は4月から館澤に勝ち続けるなど、破竹の勢いを見せていた。だが、風邪を引き、復帰直後の日本選手権1500m12位。そこからスランプに陥った。

 きつくなった時の体の動かし方をイメージできず、気持ちも前向きにならなかった。夏の白樺湖合宿でも足に違和感を覚え、別メニューでの練習となった。その後のアメリカ合宿でようやく足を気にすることなく走れるようになり、この日のレースではフォームに本来の力強さが戻ってきた。

「調子を落としてからの戻し方が、だいぶわかってきました。ダメだった時に慌ててしまって......。そうなった時は焦らずに、じっくり走り込んでやっていくしかない。そういうところを見つけられたのは大きいですね」

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