東海大の新星・飯澤千翔。トラックに続き駅伝でも衝撃の走りを見せるか (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Kai Keijiro

 8月上旬、飯澤は白樺湖でのチーム全体合宿に参加していた。

 ある日の午前中、チームは各グループに分かれてファルトレクトレーニングをしていたが、飯澤はグループには加わらずに単独で調整していた。走っている姿を見ると、少し体が重そうだった。

※速いペースとゆっくりのペースを繰り返しながら走り続けるトレーニングのこと

「この夏合宿に入る前にようやく悪いイメージがなくなって、いい流れで合宿に入ったんですけど、初めてということもあって、今は疲れが......

 そう苦笑いしながら話をする飯澤の言葉がちょっと気になった。

「悪いイメージ」とは、どういうことなのだろうか。トラックシーズンは日本選手権で負けるまで悪くはなかった。その後、何かが起きたということなのだろうか。

「日本選手権は、大会前に風邪で39.6度の熱が出て2日ほど緊急入院したんです。戻ってきたのが10日前の東海大の記録会で、自信はなかったんですけど、(日本選手権の)予選では走れたので『これはいけるかも』って思ったんです。決勝前のアップも関カレ(関東インカレ)で優勝した時みたいな感じで、監督からも『これ勝ったな』と。

 でも、決勝ではラストでスピードが上がった時についていけなくて......体が動かなかった。風邪のダメージがあって、1本は走れたけど2本はごまかしがきかなかった。そのレースが終わってから、なんか悪いイメージしか残っていなくて......練習できつくなった時、そのままズルズル落ちていくようになったんです」

 ポイント練習できつくなった時、ふとこう思ったという。

「あれ? どうやったらスピードが上がるんだっけ?」

 スピードを上げて走る自分の姿を見失ってしまったのだ。

 春からレースが続き、疲れもあったので疲労を取り、ゆっくり走ることから始めた。そうして徐々に体を回復させ、8月2日、1500mに特化した東海大記録会"ブレーキング40"に出場した。飯澤は3組でスタートし、4年の關颯人、木村理来らを抑え、3分4106で今シーズン3度目の自己ベストを更新したのだった。

「狙ったわけじゃないですけど、タイムを出せた。しかも41秒で。絶好調ならまだ3秒ぐらい速く走れた。夏合宿前に結果が出て、ちょっとホッとしました」

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