神野大地が3つの取り組みで成果。
MGC本番へ自信を確信に変えた

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 ランナーにとって、タイムほど信頼できるたしかなものはない。

 新しいことに取り組み、一生懸命練習したからといって必ずしもいいタイムが出るわけではないが、レースを経験すれば少なくとも自分のなかでその取り組みの成否が把握できる。神野は深川でタイムを出し、自信を得た。それを確信に変えるためには、士別ハーフは重要なレースだった。

 士別ハーフに出場するMGCファイナリストは、今井正人(トヨタ自動車九州)、岡本直己(中国電力)、木滑良(きなめ・りょう/MHPS)、岩田勇治(MHPS)、そして神野の5人だ。

 MGCに出場する選手の動向について、神野は気になるという。

 ゴールドコーストのマラソンでは設楽悠太(Honda)が仕上がりのよさを見せ、2時間07分50秒で優勝した。神野は「今の設楽さんは誰にも止められないですね」と苦笑していたが、MGCの選手がいまどんな状況か、知りたくなくても勝手に耳に入ってくる。もちろん、その逆もしかりだ。

 事実、深川での1万mの神野の走りを見て、実業団の監督やコーチ、選手は「神野、調子いいね。(状態が)上がってきている」と声を上げたという。ほかの選手のことを気にしない選手もいるが、「好調と強さ」を印象づけておくことは、相手に対して有効なボディブローになる。士別ハーフでそうしたインパクトを与えられる結果を出すことは、MGCに向けて重要なことだった。

 レースはスタートから村山謙太(旭化成)が飛び出したが、6キロで20名ほどの集団になった。1キロを3分1~2秒という、暑さのなかではけっこうなハイペースで進んだが、神野は余裕をもって走っていた。

 ちなみに今回、神野は時計をつけていない。その理由はこうだ。

「MGCはタイムではなく相手に勝つことが大事なので、必要ないかなと......」

 意識も装備も、完全にMGCモードだった。

 10キロを超えると、気温は27.6度になった。日差しも強く、立っているだけで汗がにじんでくる。なかなか経験できない暑さのなかでのレースだった。

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