大物・塩澤稀夕がフォアフット走法で復活。東海大の黄金世代を刺激する (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 入学時、塩澤は名取とともに非常に期待されていた。長い手足を生かした大きなストライドで、スピードに乗った走りはダイナミックで、将来「東海のエース」になると言われていた。2017年の全日本駅伝では、1年生で唯一エントリーされて2区を走った逸材である。

 だがそれ以降は故障に悩まされることになり、2年になると同級生の西田壮志(たけし/3年)が台頭するなか、名取とともに雌伏の時間を過ごした。

 故障が明けた塩澤は、今年1月、三重県の代表として都道府県駅伝に参戦。3区を走り、最下位だったが、これが復帰のスタートになった。その後、アメリカ合宿に行き、最初は環境に慣れず、練習もうまくいかずに苦しんだが、徐々に自分の新たな走りの形をつくっていった。

 そのアメリカ合宿中に復調のきっかけになったレースがあったと言う。

「アメリカ合宿の最後に行なわれたスタンフォードインビテーショナル(1万m)です。アメリカでフォームを変えて、慣れない環境でこのまま結果が出るのかな......このまま283615が生涯の自己ベストになるのかな......って思っていたんです。でも、そのレースで283715とまずまずの結果が出た。それまでやってきたことが効いていると思うことができました」

 塩澤が言うように、今シーズンの好調の要因になっているのがフォーム改良だ。それまではつま先から接地し、つま先を蹴って出るフォームだった。そうするとブレーキをかけて蹴り出す、いわゆるブレーキとアクセルを同時に踏み込む感じの走りになっていた。当然、足に負担がかかり、故障も多くなる。そこで思い切って接地を変えたのだ。

「フォアフット(前足部)でついて、つま先で蹴るようにしました。少しの違いですけど、しっかりと重心移動できるようになり、ブレーキがかからない走りになりました。なにより、故障しなくなったのが一番大きいですね」

 フォアフット走法は、ひざへの負担を軽減し、接地時間も短いため筋肉への負担も少ない。

 この改良したフォームがフィットしたのか、春のシーズン、塩澤は故障なく走ることができた。4月の四大学対抗5000mで2位。関東インカレでは1万mに出場し、29321812位)と健闘した。

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