箱根駅伝アンカーの郡司陽大が絶不調でも
笑顔の理由。「不安はない」

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 一方で、阪口竜平(4年)が日本選手権3000mSC(障害)で優勝するなど結果を出した選手もいた。その差に、郡司は焦りを感じたりしなかったのだろうか。

「うーん、自分的にはそこまでは......」

 郡司がそれほど焦りを感じていないのは、これからに自信があるからだ。昨年も夏合宿で走り込み、出雲駅伝以降に調子がグッと上がってきた経験がある。

 ただ、こうした"成功体験"があるとはいえ、「このままで大丈夫かな」と不安に思うところもある。

 郡司を含め、箱根を走った優勝メンバーの調子が上がっていないのだ。館澤亨次(4年)は昨シーズン、1500mで関東インカレ、日本選手権で2連覇を達成したが、今年はひとつも勝てなかった。小松陽平(4年)、中島怜利(れいり/4年)も低空飛行が続き、關颯人(せき・はやと/4年)も故障なく走れているが、結果が出ていない。

「結果は出ていないけど、そこまで不安はないです。タイムが出なかったり、レース後半に体が動かなくなったりすることについて、みんな違和感を持っているけど、ここまでは先生に言われたメニューをしっかりとこなしている。だから、変わっていくのは夏合宿からだと思います。

 ただ自分も含め、言われたことしかやってこなかったというのはあります。自分はジョグの量が足りない。もうちょっとやっていかないといけないかなと思います」

 チーム全体の仕上がりが遅れているなか、夏合宿から切り替えていくムードになっている。ここから新たにスタートを切ることになるが、9月上旬には出雲駅伝のエントリーを決めなければならない。郡司は「出雲は狙っていない」と言っていたが、ここにきて考えが変わってきたという。

「チャンスがあるかなと思っています。僕は昨シーズン、出雲3位、全日本2位、箱根3位と各区間で最低限走ることができた。みんなの調子がもうひとつのなか、走る目安がつく選手って使いやすいと思うんですよ。

 その特長を生かして自分のポジションを確立していかないといけないし、僕が出雲に絡んでくることでチーム全体の士気も変わってくると思うんです。そのためにも夏の白樺湖合宿でしっかりと調子を戻して、その後のアメリカ合宿で『出雲のアンカーを走れるのは郡司しかいない』と言われるようになりたい」

 郡司が描くイメージは、昨年の湯澤だ。

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