「俺はまだ速いぞ」桐生祥秀は闘争心をごうごうと燃やしている (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Fujita Takao/Photo Kishimoto

 一方、2位になった桐生は、中盤からの加速という自分のストロングポイントを見せられないレースになったが、以前よりも進化した姿を見せた。それは早い段階でサニブラウンに先行されながらも、これまでのように力んでしまうことなく、10秒16で2位という結果を残したことだ。

 4月のアジア選手権で優勝し、5月のゴールデングランプリではジャスティン・ガトリン(アメリカ)と0秒01差の勝負をして10秒01で走るなど、今季は競り合う中で冷静な走りを見せていた桐生。6月2日には、刺激し合うライバルがいない布勢スプリントにあえて出場して、自分自身の走りと向き合いながら記録を狙い、10秒0台を連発していた。

 だが、今大会初日の予選では向かい風0.4mの条件ながら10秒31という走りだった。桐生自身も走り終えて、「こんなに遅いのかという思いがあった」と言う。持ち味の加速力が発揮できなかった要因について、こう口にする。

「(布勢スプリント後から)日本選手権までの3週間試合がない時期に、いろいろな練習をしてきたんです。(足の)接地時間を長くしたバウンディングという練習もしました。それがいい効果を出したとは思いますが、持ち味でもあるピッチを少し落としてしまった面もあると思います」

 今回の全日本選手権の準決勝では、少し硬さも見える走りで中盤から伸びきれず、最後は10秒09で走った小池祐貴(住友電工)に突き放されて10秒22。レース後には「予選よりスタートがちょっと遅れたけど、後半は小池さんが前にいて、飯塚さんが3番で僕が2番だというのもしっかり見えていました。決勝に集中したかったので、70mくらいから追うのを止めて冷静にいきました。去年までは準決勝1位通過をずっと意識してきて気疲れする部分もあったので、もういいかなと思って」と話した。

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