東京五輪で金を狙う戸邉直人。劣勢からみごとな修正力で跳躍した (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Nakamura Hiroyuki

 助走の流れの中で踏切の3~4歩手前では、少し重心を下げていかなければいけないのですが、うまく下げられずにバランスを崩してしまっていたので、そこに焦点を当てながらやった感じです。技術がかみ合わないところが20と24の1回目に出てしまいましたが、何が悪いかはわかっていたので、しっかり修正できました」

 さらに、2m24の1回目を失敗した後、助走の目安となるマークの位置を1足分手前に移動させた。それが功を奏して次の跳躍を成功させると、最初に勝負どころになると考えていた2m27は1回目でクリアした。

 以前は同じ高さを跳んだ場合、すべての失敗試技数の差で順位が決まっていたが、今季からは成功した最もいい記録の失敗試技数の差で順位が決まり、それでも同じだったらその次にいい記録の失敗試技数が参考になる。2m20を終えた時点で、1回失敗した戸邉はクリアした7名中5位。2m24の終了後には、4名中3位だったが、2m27の一発クリアでトップに躍り出た。

 この時点で戸邉は、衛藤も2m27をクリアしてくるだろうと予想し、次の2m30が勝負になると考えていた。ところが衛藤は3回ともに失敗して、その時点で戸邉の優勝が決まった。

「今日は条件もよかったので、自分の中では来年の東京五輪参加標準記録の2m33を超えれば100点だなと考えていました。2m30を3回の跳躍の中でいい形にまとめて、33に挑戦できればいい流れでいけるのかなというところまで計算していました。

(2m30の成功は)あと少しというところでした。30の3回目の跳躍もクリアランス(バーを越える時の空中姿勢)に入るのをもうちょっと我慢しなければいけなかったけど、それがちょっと早すぎたので頭がぶつかってしまった感じです」

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