東海大の未完の大器が本格化。駅伝シーズンに向けてさらに競争激化! (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 7月にはホクレン・ディスタンスチャレンジ2019の5000mと1万mの出場を予定しており、「しっかりと結果を残したい」と名取は言う。このまま故障なく、調子を上げていけば全日本大学駅伝の7、8区。そして箱根駅伝の8~10区、もしくはいま以上に力をつければ2区も見えてくる。名取の"完全復活"は東海大の目標である「大学駅伝3冠」を達成するうえで欠かせない。

 この日、5000mの1組には、昨年の箱根メンバーである河野遥伎(はるき/4年)と本間敬大(けいた/2年)、そしてハーフでメキメキと頭角を現している鈴木雄太(3年)らが出場していた。そのなかで、鈴木らを抑えて1組1位、5000m全体で10位(14分22秒17)に入ったのが、竹村拓真(1年)である。

 出身校は、前主将の湊谷や4年の松尾と同じ秋田工業高校。朴訥とした雰囲気を漂わせるフレッシュな1年生だが、走りは強気だった。

 ラスト1周の鐘が鳴ると鈴木のうしろから飛び出し、グングン加速していった。そして2位に2秒差をつけてトップでフィニッシュした。

「今日のレースはタイムも少しは気にしていたんですけど、一番は勝ち切ることだったので、勝ちに徹する走りを心がけました。勝てたのはよかったんですが、自己ベストが14分13秒で、その近くで走ることが本当の力になっていくと思うので、(今日のタイムの)14分22秒というのは課題が残ったレースだったと思います」

 この春に入学したばかりで、トラックシーズンはまず大学の生活環境に慣れることだが、竹村は東海大独特のスピード練習をいかに自分の走りに生かすかをテーマにしてきたと言う。

「練習は高校に比べて負荷がかなり大きいですが大丈夫です。今後の自分の目標は、5000mと1万mを走って結果を出していくことです。5000mでは13分台、1万mでは29分30秒を切れるようにしたいです。駅伝は先輩方が強いんですけど、ただ『強いなって』あきらめるのではなく、日々の練習から食らいついて、メンバー争いに絡めるように頑張っていきます」

 表情はまだあどけなさが残るが、自信がみなぎっている。同じ1年生には関東インカレの1500mで館澤亨次(たてざわ・りょうじ/4年)を破った飯澤千翔(いいざわ・かずと)らがおり、実力も肝っ玉も据わった選手が多い。

 東海大は4年生の"黄金世代"が注目を集めているが、「大学駅伝3冠」を達成するには下級生の突き上げが必須である。竹村が夏合宿を乗り越えて、出雲駅伝、全日本大学駅伝のメンバー争いに絡んでくるようだと、部内競走がより激しくなり、層はより厚くなる。秋の駅伝シーズンに向けて、まだひとり楽しみな選手が出てきた。

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