主将・館澤亨次にガチンコ勝負で3戦3勝。
東海大に強力ルーキー現る

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

「コーチにランニングドリルを教えてもらって、走りがだいぶ変わりました。春先と比べて、楽にスピードが出るようになったんです。今はラストまで(先頭について)いければ勝てる自信がありますね」

 ラストスパートには絶対的な自信があるのだろう。レース展開がスローになろうが、ハイペースになろうが、飯澤はまったく動じない。

「どんなレースでも慌てることはないです。落ち着いてレースができています。ペースが上がったら上がったで、うまく対応すればいいだけなので......」

 大学に入ってまだ数カ月。ここまで強さを見せつけているのは、飯澤の素質はもちろん、コーチとの出会いやトレーニングメニューも大きいが、館澤や木村の存在も忘れてはならない。日常的に日本チャンピオンの選手と一緒に練習し、彼らからいろんなことを吸収している。

「ここまで強くなれたのはトレーニングが合っているからだと思いますが、館澤さん、木村さんという先輩がいるのは、僕にとってものすごく大きいです。練習ではいつもふたりのうしろを走って、いいところをできるだけ盗もうと思っていますし、館澤さんには『もっとこうしたらいいよ』と教えてもらっています。それを練習で実践して、ずっと繰り返してきたことが大きいですね。ただ、まだ修正すべき点がたくさんあるので、それを今後に向けてやっていきたいと思います」

 天井知らずの向上心を持ち、速く走るために必要なことを貪欲に吸収する。それをすぐに体現してしまうところに、飯澤が持つ天性のランナーとしての質の高さを感じてしまう。

 一方の館澤は、悔しさというよりも寂しそうな表情が印象的だった。レース後、右ひじには大きな絆創膏が貼られていた。右手を出してゴールに飛び込んだ際、そのまま勢いよく転び体をトラックに痛打したのだが、それほど激しいレースだった。

「完敗ですね。力を出し切ったので、それで勝てなかったことは力負けです」

 館澤は潔く、0.01秒差の敗北を受け入れた。ただ、それでも気持ちは前向きだった。

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