主将・館澤亨次にガチンコ勝負で3戦3勝。東海大に強力ルーキー現る (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

「僕のレースプランとしては、残り300mから前に出ていくつもりだったんですけど、途中から急にペースが上がって、野口さんについていけなくて......。館澤さんが前に出てくれたので、それに合わせて、ラストでまくろうと思っていました」

 館澤が大きなストライドでスピードを上げ前に出てきたが、外から舟津彰馬(中央大4年)がペースを上げて2位に上がる。そのうしろを館澤と飯澤が懸命に追う。野口のスピードが落ちず、一時は20m以上離されたが、バックストレートに入ると徐々に差が縮まり、100mを切ると館澤が先行し、飯澤との壮絶なデットヒートが始まった。

「向かい風が強いと館澤さんの方が強いですし、前に出ると抜け切る自信がなかったので......ちょっとやばいなって思っていました」

 両者とも懸命に歯を食いしばり、最後は、館澤は右手を、飯澤は左手を前に出すようにして、ほぼ同時にゴールになだれ込んだ。

 館澤はコース上に倒れこんだまま起き上がれない。判定結果が出るまで、少し時間を要した。そして電光掲示板に「1位 飯澤千翔」と出ると、飯澤はよほどうれしかったのだろう、ガッツポーズをして喜びを爆発させた。

「僕はずっと館澤さんと木村さんの背中を見てきたので......館澤さんにとって最後の関カレという大きな舞台で背中を見て終わるのは嫌だった。ギリギリでしたし、胸の差だったと思うんですけど、勝ててよかったです」

 飯澤はホッとした表情を見せて、優勝の喜びを噛みしめた。

 これで館澤とは3レースを戦って、いずれも負けなしである。それにしてもルーキーとは思えない堂々とした走りっぷりだった。

 飯澤のすごさは、恵まれた大きな体を生かしたスムーズな走りにある。西出仁明コーチが「体の使い方がうまい」と言うように、走りに無理・無駄がない。余計な力が入ることなく、体全体を使ってスピードに乗っていける。とりわけ、ラストスパートの速さが驚異的なのだが、東海大に入ってからアメリカ人コーチの指導の影響で、さらにスピードに自信がついたと言う。

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