主将・館澤亨次にガチンコ勝負で3戦3勝。
東海大に強力ルーキー現る

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

東海大・駅伝戦記 第52回

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 関東インカレ(学生陸上)の男子1部1500m決勝(5月24日/相模原ギオンスタジアム)は、ここ数年のなかでも最も激しく、熱いレースになった。主役は、東海大の飯澤千翔(いいざわ・かずと/1年)と館澤亨次(たてざわ・りょうじ/4年)のふたりだ。

関東インカレで0.01秒差の接戦を繰り広げた東海大4年の館澤亨次(左)と1年の飯澤千翔関東インカレで0.01秒差の接戦を繰り広げた東海大4年の館澤亨次(左)と1年の飯澤千翔 東海大はスピード強化のために1500mを積極的に取り組むことをここ数年続けてきているが、そのなかで強さを見せてきたのが館澤だった。館澤は同学年の木村理来(りく)と切磋琢磨しながら力を磨き、日本選手権1500mで2連覇を達成。今年1月の箱根駅伝では4区を走り、初優勝に貢献した。

 スピードを生かしてロングにも対応する――東海大のコンセプトを具現化する選手に成長した。今回その館澤が目指していたのが、学生最後の関東インカレでの1500m3連覇だった。

 しかし今シーズン、東海大に異次元の強さを持つ1年生が入ってきた。それが飯澤である。

 ふたりの対決は、4月の日本大学・東海大学対校戦の1500mから始まった。このレースで飯澤が3分45秒64の自己ベストで勝利すると、つづく5月4日のGGN(ゴールデンゲームズinのべおか)でも3分42秒07と自己ベストを再度更新して優勝した。飯澤はその時から「今シーズンは負けなしで終わる」と決意した。

 一方、「GGNで負けて、相当悔しかった」と危機感を抱いた館澤は、関東インカレに照準を合わせて調整してきた。それゆえに1500mは、ともに負けられない"ガチンコ勝負"になった。

 レースは少し強めの風が吹くなかで始まった。

「今回は館澤さんだけをマークしていました」

 飯澤がそう語ったように、序盤は館澤を少しうしろから見るような位置をキープした。30度を超える異常な暑さと風の影響もあり、ペースは400mが1分12秒、800mが2分22秒とかなりスローな展開となった。

 だが、ラスト1周の鐘が鳴ると、一気にレースが動き出した。先行する野口雄大(順天堂大3年)に追いつこうと、2番手につけていた飯澤がピッチを上げる。しかし、さらにスピードを上げる野口になかなか追いつけない。

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