エチオピアで一流ランナーと練習。神野大地が意識改革した25日間 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 また、ケニアはランナーが多いので人の視線を感じることはなかったが、エチオピアはランナーもアジア人も多くないので、神野はよく中国人と間違われ、地元の人の鋭い視線に少し恐さを感じることもあった。夜になるとなぜかインターネットがつながらず、神野はやることもないのでいつも8時半ぐらいには就寝していたという。

「ほんと走って、食べて、寝るだけの生活でした(笑)」

 1週間のスケジュールは、3日間はポイント練習でスピード練習、ロングラン、ダッシュと20キロの距離走など強めの練習をする。残りは、ジョグやフィジカルトレーニングに充てた。神野は当初、1日3部練習を想定していたが、現地に入るとゼーンから2700mでの高地トレーニングについて説明があり、2部練習に切り替えたという。

「ケニアは2300mでエチオピアは2700m。たった400mしか違わないんですけど、ゼーンから『その400mの差は大きい。疲労感がまったく違うぞ』って言われたんです。だから、最初の2週間は無理せずに抑えて練習をしていました。

 実際、2700mはめちゃくちゃキツかった。最初はキロ3分45秒のジョグでさえきつくて......。400mの差だけど、1000mから2000mに上がった時ぐらいの差を感じるんです。2週間目に入るとけっこう疲れが出て、ゼーンのいうことが正しかったんだと思いましたね」

 一般的に2700mの高地ではSpO2(血中酸素濃度)が下がり、体に大きな負荷がかかると言われている。具体的に、走っているとどんな影響が出るのだろうか。

「日本で走っていると徐々にきつくなって、最後にマジできついって感じになるじゃないですか。でも、ケニアもそうですけど、エチオピアは走っていて余裕だなって思っていると、突然バーンってしんどくなるんです。乳酸がいきなりマックスになるみたいな(苦笑)。心肺のきつさというよりも、エネルギーが体に行き渡っていないような状態になって、体が動かなくなるんです。体が動かなくなるとあとの練習にも影響するんで、ペース設定とか最初は非常に難しかったですね」

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