腹痛に悩むランナーを救えるか。
筋膜の緩和が改善のカギだ

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 内臓に連結している筋膜のひとつに、腹部内部にある筋膜がある。腹膜は二重構造で胃や腸を包み支えている。内側は臓側腹膜、外側は壁側腹膜と呼ばれている。臓器に接する臓側腹膜には痛覚受容器はないが、壁側腹膜にはあるという。要するに、痛みを生じるということだ。

 ランニング中の腹痛はさまざまな原因が考えられるが、なにかしらの悪影響により、壁側腹膜が緊張状態になることで腹痛が発症するのではないかと言われている。

 では、その緊張をなくし、悪影響を断ち切るためにどうすべきなのか。中本は言う。

「壁側腹膜に緊張が生じるのは、食事内容や内部臓器の疲労や機能不全、外傷、手術、オーバーユース(体を酷使すること)によって、体のいたるところにある筋膜が高密度化(硬化)するからです。

 硬化している部位をほぐし、柔らかくすることで2つの好影響が期待できます。1つは筋膜に存在するセンサー(固有受容器)の機能が正常化され、体性感覚による脳への感覚入力がより正確な情報となり、いざ体を動かす時に筋の働きがスムーズ化され、脳がコントロールしている自律神経の働きも活性化されます。

 もう1つは、内臓に連結している筋膜のラインが緩むことで、胃や腸を支えている壁側腹膜の緊張も緩和されることです。この効果により、ランニング中の腹痛が解消されるものだと思います。そして、その状態をつくってから姿勢を矯正するエクササイズを行なうと効果が持続されやすくなり、非常に効果的です」

 では、具体的にどのような施術を行なうのだろうか。腹痛予防だが、施術するところは腹部だけではない。腹部に加え、胸部、頸部前面、下肢前面、下肢後面、頭部と背部、腰部と臀部などがある。腹痛なのになぜ胸部や頸部なども必要なのかと言うと、身体各部の筋膜は階層をまたいで、前述した壁側腹膜へ直接的に連結しているからである。

 まず腹部付近の施術法だが、へそ周辺、剣状突起(胸骨の下端に突出する突起)からへその中間、へその横、へその下を触診し、硬くなっている部分を探し、指先などで表面を軽く揉みほぐす。表面を軽く揉んでいるだけなのに、施術を受けている人は痛みを訴える。柔らかくなると痛みはなくなり、また次の部位を同じように施術していく。

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