波乱の100mを制した桐生祥秀。タイトル獲得は大きな意味がある (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 新華社/アフロ●写真 photo by Xinhua/AFLO

 桐生自身、アジアで行なわれる大会とは、これまであまり相性がよくなかった。4年に一度行なわれるアジア競技大会では、2014年、代表に選ばれたものの、太腿の肉離れを起こして欠場。さらに、昨年のアジア競技大会も日本選手権で3位に終わったことで、個人種目の出場は果たせず、リレーのみの出場だった。

 今大会は、9秒91のタイムを持つ蘇炳添(そ・へいてん)と9秒97を持つ謝震業(しゃ・しんぎょう)の中国勢が出場しなかったため、桐生の優勝の可能性は大きくなっていたが、山縣亮太(セイコー)や、昨年のアジア大会で山縣と同タイムの10秒00で競り勝って2位になっていたトシン・オグノデ(カタール)や、ジャマイカからの国籍変更をし、9秒94の記録を持つアンドリュー・フィッシャー(バーレーン)もいるという厳しさはあった。

 そんななかでも桐生は予選から、これまでにないほど落ち着いた走りを見せた。21日の予選は第3組のトップでゴール。全体では6番目の10秒29で走った。

 そして、22日の準決勝第2組では、「スタートでちょっと躓いてしまった」と振り返るが、予選と同じく、力みのないスムーズな走りを見せた。

「中盤から後半にかけては予選でやれなかったことができた」と、しっかり加速して追い風1.4mの条件で全体トップの10秒12で走って決勝進出を決めた。「今回は80m(付近)でいけたと思ったので、そこからは気持ちに余裕を持っていけた」と納得の表情だった。

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