神野大地がMGCで勝つための戦略。
エチオピア合宿で何を得てくるか

  • 佐藤俊●文・写真 text&photo by Sato Shun

 神野はレースが終わると、中野に報告書を提出することになっている。そこにコーチである高木聖也も加わり、3人が思ったことを書いて共有している。中野は東京マラソンのあと、<個人的な考えだが、MGC獲得後、新しいことをやるよりも自然体で目の前にあることをこなしていき、自分らしく戦えば最後に結果がついてくる>と書いた。

 今までの継続が重要であり、レースもカッコつけるのではなく、あくまで自分らしく、ということだ。それは多くのオリンピック選手を指導してきた中野だからこそわかることでもある。

 これが中野の考える"勝ち方"だが、当然、神野にも考えがあるだろう。今後は高木コーチを含めた3者で話し合い、戦い方を統一していくことになる。

 レイヤートレーニングが終わるとアイシングだ。約20分のタイマーをセットし、下半身に氷を当てラップでぐるぐる巻きにして冷やす。

 そして、4月5日にはエチオピアで合宿をするために出発した。

 世界の陸上長距離界にあって、アフリカのエチオピアは最大勢力のケニア勢に次いで強く、優れたランナーが多い。神野は昨年の夏、今年1月の2回、ケニア合宿をこなした。トレーニング環境を知ることで必要な練習ができ、食事面も工夫し、充実した合宿生活を送れるようになった。今回、ケニアではなく、エチオピアを選択したのはどういう意図があったのだろうか。出発前、神野はこう語っていた。

「いまケニアは雨季なので、コンディションがよくないんです。それにケニア以外にもう1つか2つ、自分のなかで選択肢を広げたかったんです。アメリカや中国でも探したんですが、最終的に決め手になったのは高地です。エチオピアの合宿地は標高が2700mあって、ケニアの合宿地(2300m)よりも高いんです。それにエチオピアは世界で2番目に長距離が強い。ケニアとはまた違ったなにかを、肌で感じることができるのかなと思っています。SNSを見て、トレーニングの環境もいいとわかっているし、エチオピアで合宿している海外の有力選手も多いので楽しみですね」

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