「肩の荷が下りた」神野大地。東京五輪を目指す心境に変化あり (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • 岸本勉●写真 photo by Kishimoto Tsutomu

 1カ月間の練習は、非常に密度が濃く、昨年の夏に初めて行った時よりもこなせる練習が増えた。確実に自分のレベルが上がっているのを実感できたという。

「たとえばスピード練習なら、100010本のインターバル走を3分切りでいくんですが、前回は4~5本で切れなくなったんです。でも、今回は9本目まで2分57秒でいけた。これは前回と同じ場所でやったので、確実に自分のレベルが上がったなと感じましたね」

 充実した練習をするために環境も変えた。前回はホテル暮らしで、ホテルの食事にプラス日本食を摂るかたちだった。だが、今回は家を借りて、食事は栄養士と相談して現地で調達できる食材でメニューを考え、髙木聖也コーチが3食の食事をつくった。もちろん日本食も大量に持ち込み、「いい練習をして、いい食事を摂ることができた」という。

「2回目というのが大きかったですね。ジョグに行くにもいくつものコースがわかっていますし、一緒に練習するグループのメンバーとも顔見知りになった。気持ちの余裕があったので、自分が強くなるための練習を選択し、集中して取り組めた」

 カレンダーの日付が進み、2月に入ると東京マラソンまで1カ月になり、カウントダウンが始まった。ケニアでの合宿中、本番へのプレッシャーを感じることはあったのだろうか。

「ケニアで練習している時は、さほどプレッシャーもなく、とりあえず東京で結果を出すために練習するという思いで過ごしていました。本当にこの環境でいいのかなと思うこともありましたが、ケニアは自分が強くなれるところ。ここに賭けたいという思いでやってきたので自分を信じて、最後まで練習をやり切ることができました」

 充実した練習を終えた神野は、2月21日に帰国した。

 標高2300mの高地で1カ月のトレーニングをしてきた体の状態を調べるために、翌日に血液検査をした。検査項目すべてで過去の4レース前よりもいい数値が出た。とりわけ重要なヘモグロビンの数値が、神野の狙いである高地トレーニングの成果が上がったことを示していた。レースウィークに入ってもジョグの走り始めの感覚がよく、「状態はすごくいい」という手応えを感じていた。

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