東海大史上最強。箱根駅伝
「山コンビ」はいかにして誕生したのか

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Nishimura Naoki/AFLO SPORT

東海大・駅伝戦記 第44回

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 東海大が初めて箱根駅伝を制覇した。

 レースまでのアプローチを変え、練習内容は長距離中心になり、コンディションづくりは選手の自主性に任せた。それが選手の責任感とやる気を生み、競技への意識も取り組み方も変わった。

 さらにレースでは、両角速(もろずみ・はやし)監督が重視した4区で館澤亨次(たてざわ・りょうじ/3年)が区間2位の走りで前を走っていた青学大をとらえて2位に上がったことなど......勝因はいくつも挙げられる。

東海大にとって鬼門だった5区で区間2位の走りを見せた西田壮志東海大にとって鬼門だった5区で区間2位の走りを見せた西田壮志 ただ区間配置で言えば、2区、5区、6区が早めに決まったことが大きい。とりわけ5区と6区の山上り、山下りの"特殊区間"は、箱根を制するために非常に重要になるのだが、これまで東海大はとくに5区が鬼門になっていた。

 そして今回、その5区に西田壮志(たけし/2年)が入り、6区のスペシャリスト・中島怜利(れいり/3年)と山のタッグを組んだ。ともに身長165センチに満たない小さなふたりが、とてつもなく大きな働きを見せたのである。

 今シーズン、西田は好調だった。3月の立川学生ハーフで3位、10月には1万mで285874の自己ベストを更新した。初の駅伝デビューとなった全日本大学駅伝では4区を走り、区間3位。初駅伝は左足アキレス腱痛を抱えていたため後半は粘れなかったが、それでも大舞台での経験を積んだ。

 その後、故障を完治させ、箱根に向けて万全を期すために上尾ハーフマラソンを回避。その分、ジョグの距離を伸ばすなど長距離を走れる体づくりを進め、距離に対する不安を解消した。

 学校近くにある弘法山を走り、19キロコースのヤビツ峠も5回ほど走った。最初は、同じく山区間の候補だった東優汰(4年)と走ることもあったが、11月からはレースを想定して、ひとりで黙々と走った。

 チームではムードメーカー的な存在だ。普段はチームメイトにいじられ、先輩にもかわいがられる。練習グラウンドでニコニコしていたら両角監督から「もうちょっと気を引き締めてやれ!」と叱責されたが、それでもめげずに明るいキャラでチームを盛り上げる。

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