「これぞ箱根の駆け引き」。
青学大vs東洋大、両監督の戦略を分析した

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • photo by Naoki Nishimura/AFLO SPORT

 しかし、青学大は当日変更で3区に入れた森田が爆走。区間記録を12秒更新する1時間01分26秒を出し、東洋大の吉川洋次(2年/区間2位)を抜いて7秒差をつけるすさまじい走り。ここまでは両監督の作戦が正面からぶつかり、競り合いが続いた。

 決着をつけたのは、4区の相澤だった。スタートして1.8kmで青学大の岩見に追いつくと、2.7km過ぎから前に出て、一気に引き離した。岩見は秋から調子を上げて、11月の世田谷ハーフで1時間03分13秒の自己新を出し、1万mでは青学大今季5位の28分49秒13を出していた。原監督が4区終盤の上りにも対応できると踏んでの岩見の起用だったが、相澤が相手では荷が重かったのだろう。結局、岩見は区間15位。東洋大との差を3分30秒に広げられてしまった。

「私自身が4区の難しさ、大事さをもっと自分自身に圧をかけるべきだったと思います。岩見も普通にいけば当然走るだろうと思っていたが、やっぱり箱根には他とは違うプレッシャーがあるんだなと感じました。初駅伝の選手に負担をかけたのは私の責任」

 原監督は4区の岩見の起用をこう振り返った。ただ、4区終了時点ではまだ逆転の可能性はあると考えていただろう。青学大の5区は前回も5区を走った竹石尚人(3年)。前回は、脚に痙攣が起きた状態での区間5位だった。それだけに原監督は「今回はもっと走る」と自信を持っていた。

 ところが竹石の走りは重く、まったくペースが上がらない。駒大や国学院大、法大に抜かれるまさかの展開になり、前回より2分以上遅い1時間14分52秒で区間13位。東洋大だけではなく、東海大にも大きく差を広げられ、青学大の往路は東洋大と5分30秒差、東海大とは4分26秒差の6位という結果になった。

 原監督は、竹石の5区と小野田勇次(4年)の6区は早くから決めていたはず。その安心感が、これまで直前の選手の体調を見極め、戦略ミスがなかった原監督の目を狂わせたのかもしれない。

「4区と5区は私の誤算。チームが右肩上がりの時は成果が出てうれしいばかりだが、5連覇を狙ううえではその進化を止めて、これまでの4年間と比べてどうかというところで終わっていた」と原監督は反省の弁を口にした。

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